教育熱心な自治体に住む子どもは「スマホ中毒」になりにくい? 都教委のデータを読み解く

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教育熱心な自治体に住む子どもは「スマホ中毒」になりにくい? 都教委のデータを読み解く

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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都内の教育熱の高い自治体に住む子どもはパソコンやスマホにあまり夢中にならない? 教育ジャーナリストの中山まち子さんがデータを読み解き、解説します。

教育熱の高い自治体に住む小学生の傾向とは

 東京都教育委員会が毎年行う「東京都児童・生徒体力・運動能力、生活・運動習慣等調査(東京都統一体力テスト)」を見ると、パソコンやスマートフォン、タブレット端末、携帯型ゲーム機の使用時間を問う「携帯等の視聴時間」の項目で、東京都に住む小学生の使用時間が直近4年間で伸びていることがわかります。

 このような傾向は、中学受験する小学生の割合が高い自治体でも当てはまるのでしょうか。今回は千代田区や港区、文京区といった、「教育熱の高い自治体」に住む児童の生活習慣の調査からひも解いていきます。

スマートフォンやタブレットに興じる子どものイメージ(画像:写真AC)



 東京都の児童全体で見ると、「携帯等の視聴時間」は長時間化が進んでいます。携帯等で「2時間以上」視聴している割合は平成26年度から平成30年度にかけて、男女ともに小学4年生以上で増加。小学5年生の男児は平成26年度から5.7ポイント増の30%、6年生は8ポイント増の32.6%となっています。

 しかし同調査の区市町村別のデータを見ると、それがすべての地域に当てはまるとは限らないことがわかります。一般的に教育熱が高いといわれる千代田区、港区そして文京区の4年間のデータは全学年で長時間化の動きが平均値より鈍く、学年によってはその割合が減少しているのです。

 千代田区は小学1~4年生の男児の場合、5.9ポイントも減っています。一方港区でも、小学2~4年生の男児は減少しています。文京区は小学1~3年生の男児に同様の傾向がみられます。

 女児は千代田区の低学年で微増、文京区は微増微減となっています。しかし港区は小学1~4年生の女児に減少傾向があります。

1時間未満の視聴の割合が高い3つの区

 平成26年度の「携帯等の視聴時間」で「1時間未満」の割合は小学1年男児で76.9%、小学6年男児で50.7%、小学1年女児で88.8%、小学6年の女児で60.9%と全学年で半数以上を占めていました。

 しかし平成30年度は、小学1~3年生の男児には大きな変化がなかったものの、小学4年生以上で数値が軒並み減少。小学6年生男児は特に39.5%と、4年間で21.4ポイントも減少しました。女児は男児ほどではないにしろ、全学年で平成26年度より割合が低下し、小学6年女児では50.7%と4年間で10.2ポイントも減っていました。

スマートフォンやタブレットに興じる子どものイメージ(画像:写真AC)



 千代田区、港区、文京区いずれの自治体も平成30年度の結果は、東京都の平均同様に減少しています。しかし、それでも平均と比べると「1時間未満」の占める割合は高く、3つの区の中で一番割合が小さかった港区の小学6年男児でも47.4%と、都の平均より6.9ポイントも増えているのです。

 スマートフォンや携帯型ゲーム機の普及で、友達と遊ぶときやひとりのときでも場所を選ばず動画を視聴したり、ゲームをしたりすることが当たり前になっています。Youtuberに憧れ、チャンネルを欠かさず見ている子もいます。ゲーム実況で裏技などの情報を手に入れようとする児童もいます。

中学受験率の高い3区のふるまいとは

 千代田区、港区、文京区の3つの区の児童たちは習い事や通塾で、キッズ携帯やスマートフォンを手にする時期は早いはずです。しかし、教育委員会の調査結果を見るとダラダラと使用している子どもの割合は小さく、自己コントロールが出来ているように映ります。

スマートフォンやタブレットに興じる子どものイメージ(画像:写真AC)



 通塾や学習時間、習い事に時間を取られ、スマートフォンや携帯型ゲーム機を利用する機会はあまりないでしょう。しかし、近くに置いてあれば触れてしまうのが子どもです。小学生が自分自身でコントロールしているというよりも、中学受験を控えているわが子がゲームに夢中になったり、スマートフォンの誘惑や要らぬ問題に巻き込まれたりしないよう、親が管理していると見るのが妥当でしょう。

「勉強に支障をきたすような使い方はさせない」という親の決意が、この3つの区の結果から感じられるような気がします。

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