今よみがえる開高健と「昭和」の記憶――没後30年、杉並「開高健記念文庫」を訪ねて

作家・開高健の死から2019年12月で30年がたちます。そして、2020年は生誕90年という節目も迎えます。「今こそ開高健に関する著作を手に取り、偉大な足跡をなぞってみてほしいほしい」とイベントプロデューサーのテリー植田さんが熱く語ります。


昭和の東京五輪を活写した著作

 そして最後の作品となった『珠玉』(1990年、文藝春秋)は、宝石にまつわるエッセイ風の小説です。

「フィッシュオンチップス」や「オガ屑」の話など、知っているエピソードが満載。濃厚にしてぐびぐびと飲ませるような言葉たちに吸い込まれていくような読書体験――。この『珠玉』から僕は開高健に本格的にハマったのでした。

 誕生日プレゼントとしてこの本を何人の友人に贈ったことか。宝石はあげられなくとも、宝石の本は高校生でも買うことができたから。

 2019年、20年は、ずばり開高健イヤーなのです。

 1964(昭和39)年に開催された東京オリンピックの前年に高度成長する東京を書き尽くしたのが開高健の名著『ずばり東京』。2019年は東京オリンピック・パラリンピック開催の前年で、偶然にも「パニック」さながら渋谷、銀座、築地などでネズミ大量発生のニュースがあったのです。

 二度めの東京五輪を翌年に控えたこのタイミングに合わせて、開高健の最新刊『開高健のパリ』(2019年、集英社)が刊行されました。さらに「はじめての開高健」という開高健入門ガイドブック(同年、集英社)という電子版の記念冊子が発表されています。無料でダウンロードできるのでぜひ読んでみてほしいと思っています。

無料でダウンロードできる『はじめての開高健』(画像:集英社)

 角田光代さんと行く開高健記念文庫の巻頭特集や、「トップランナーが語る開高健」として、冒険家・作家の角旗唯介さん、博報堂のスピーチライターひきたよしあきさん、ヤフー事業プロデューサーの藤原光昭さん、サン・アドのコピーライターである岩崎亜矢さんら、ゆかりある開高ファンのインタビューも掲載されていて、何とも語りの熱量がすごい。

『開高健のパリ』に関する角田光代さんのコメントも寄せられていて。開高健という人間と言葉の匂いを見事に言い表しています。角田光代さんいわく、開高健は、年齢に関わらず最初から確固たる文体を持っている完成系の作家であった、と。

 これは僕の勝手な解釈ですが、「開高健 = プリンス」なのではないでしょうか。プリンスというのはもちろん、言わずと知れたあの米国のシンガーソングライターのプリンスです。

 開高健は、26歳で「パニック」の名作を生み出し文壇のスターとなりその後、『裸の王様』『日本三文オペラ』『ロビンソンの末裔』『輝ける闇』『夏の闇』と名作をたて続けに刊行しました。

 プリンスは同じ26歳で「パープルレイン」が大ヒットした映画とともに世界的スーパースターとなり、その半年後に『アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ』をリリース。「パレード」「サイン・オブ・ザ・タイムス」「ラブセクシー」「バットマン」と不朽の名作を80年代に残しました。

 開高健とプリンスのふたりは完成型のスターであり、同じ58歳でこの世を去りました。

 晩年、開高健はバックペイン(背部痛)の治療で茅ヶ崎のプールで泳ぎながらも最後まで病床で「珠玉」の原稿を書き続けました。プリンスはミネアポリスで重い腰痛に悩まされながらも自身が持つレコーディングスタジオ「ペイズリーパーク」で録音を最後まで続けたといいます。まさに「完成型」のふたりだと思うのです。

「記念文庫」で残されていた、開高の匂い


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