人気ドラマ『同期のサクラ』 高畑充希がコロッケを買ったレトロ商店街を歩く

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人気ドラマ『同期のサクラ』 高畑充希がコロッケを買ったレトロ商店街を歩く

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増淵敏之

法政大学大学院政策創造研究科教授

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テレビドラマ『同期のサクラ』のロケ地となった墨田区の「キラキラ橘商店街」について、法政大学大学院教授の増淵敏之さんがその魅力を解説します。

1話目に登場した「キラキラ橘商店街」へ

 現在放送されている地上波のテレビドラマで、筆者(増淵敏之。法政大学大学院政策創造研究科教授)は水曜午後10時に放送されている『同期のサクラ』(日本テレビ系)が面白いと感じています。

番組ホームページ(画像:日本テレビ)



 ドラマはすでに7話まで終了しているのですが、なぜか冒頭は毎回、高畑充希演じる主人公のサクラが脳挫傷のために意識が回復せず入院しているところから始まるのです。その原因はまだ明らかにされていません。

 大まかなストーリーは、新潟県の島から上京してゼネコンに勤めるサクラが同期入社の仲間とときには助け合い、反発しあいながら夢に向かって進んでいく内容です。一見わかりやすそうなストーリー展開ですが、脚本を担当するのは『過保護のカホコ』を手掛けた遊川和彦なので一筋縄ではいきませんし、遊川氏の術中に嵌られた気分になります。

 筆者が毎週見ている理由のひとつは、サクラの台詞「私には夢があります」が頭の中でリフレインしているからです。彼女の夢は島に橋を架けることなのですが、そのせいですっかり覚えてしまいました。

 新潟県には佐渡島と粟島があり、ドラマの島は人口規模から考えて粟島に近いのですが、残念ながら橋が架かる距離ではありせん。やはりフィクションの島と考えた方がよさそうです。

 今回筆者が足を向けたのは、1話目に登場したサクラの会社の通勤途中にある商店街です。この商店街は幾つものドラマのロケ地になっています。正式名称は「向島橘銀座商店街」(墨田区京島)で、「キラキラ橘商店街」の通称で知られており、東武曳舟駅から徒歩7分、京成曳舟駅から徒歩5分の距離にあります。

 長さは、明治通りから東武亀戸線の手前まで約450メートル。商店街の看板には「キラキラ橘」と記載されており、店舗の傾向としては総菜や乾物、生鮮食品などが多いという印象が強く、コンビニはありません。いわゆる下町の商店街の風情が漂います。

ドラマ・映画ロケの誘致に注力

 商店街の名前の由来は、1931(昭和6)年に「橘館」という映画館ができたからだといわれています。1931年といえば、映画が娯楽の中心になりつつあった頃。かつては橘館通りと呼ばれていたそうです。

「向島橘銀座商店街」の様子。2018年8月撮影(画像:ULM編集部)



 この界隈は第二次世界大戦の戦災を受けたものの、被害が比較的少なかったとのことですが、やはり商店街の活動は一時中断。しかし戦後は周辺の人口増加を背景に、商店街も復興しました。しかし錦糸町や亀戸などが商業拠点として発展し、さらには東京スカイツリーによる押上エリアの商業化なども加わり、徐々に衰退の方向にあります。

 しかし商店街は生き残りをかけ、下町の本来的な文化であるコミュニティに注目してさまざまな努力を行ってきました。東京都の助成等も活用し、レトロさを有効利用してきた結果のひとつが「ロケの誘致」です。その結果、『ヒモメン』『御茶ノ水ロック』『表参道高校合唱部!』『東京バンドワゴン』『主に泣いてます』『マルモのおきて』『あいのうた』など枚挙に暇がありません。

 江東区の砂町銀座商店街(江東区北砂)も数々のテレビドラマのロケ地として知られていますが、街路の魅力的にいえば、「キラキラ橘商店街」はなかなかのものです。商店街こそ直線的に伸びていますが、周辺の街路は幹線道路を除いて蛇行しており、「ラビリンス感」が満載。商店街にはお洒落なカフェもあったり、脇道には古い建物をリノベーションしたカフェや雑貨店も散見できたりします。車だと通れない幅の路地も縦横に張り巡らされ、頭を上げると古い建物越しに東京スカイツリーが高くそびえ立っているのが印象的です。

訪日外国人も魅了できる可能性

 東武曳舟駅や京成曳舟駅の周辺にはタワーマンションやショッピングセンター、飲食店なども充実していますが、「キラキラ橘商店街」の方に向かって歩くと、新旧の対比が鮮やかになってきます。これがこの界隈の魅力といえるのでしょう。近代的な佇まいとレトロな佇まいの見事な調和といえます。

「向島橘銀座商店街」の様子。2018年8月撮影(画像:ULM編集部)



 さすがに筆者が訪れたときは平日の昼頃だったので、人通りは余りありませんでしたが、生鮮食品を販売している商店からは呼び込みの大きな声が響いていました。

 もしかすると、訪日外国人が日本に求めている要素が満ち溢れている商店街という見方もできます。商店街は、訪日外国人であふれ返っている押上からたった一駅の徒歩圏にあるため、ロケの誘致にとどまらない可能性を十分に持っているといえそうです。

 そういえば、知る人ぞ知る墨田限定のアラフォーアイドル「帰ってきたキューピッドガールズ」もこの商店街を拠点にしています。これも訪日外国人から見ると魅力として映るのかもしれません。

『同期のサクラ』のサクラが食べていたのはコロッケ。商店街では「デリカショップくるみ」と「鳥正」の2軒がコロッケを販売しています。ドラマではどちらの店のコロッケなのかは明確にわかりませんが、コロッケはそもそも「下町商店街の象徴」なのかもしれません。そういえば、かつてコッペパンの名店「ハト屋」もありましたね。

 休日に押上まで行ったら、少し足を延ばして『同期のサクラ』を思い出しつつ、商店街を散策したり、路地をめぐったりしてみることをお勧めします。

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