10月スタート 浅草六区の歩行者天国は「興行街」だったころの輝きを取り戻せるのか?

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10月スタート 浅草六区の歩行者天国は「興行街」だったころの輝きを取り戻せるのか?

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淡川雄太

都市商業研究所

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10月25日より浅草六区ブロードウェイ商店街で毎週末開催されることになった「歩行者天国」について、都市商業研究所の淡川雄太さんが解説します。

気軽に楽しめる「祭り」と「国際交流」

 浅草寺、浅草神社など数多くの観光地を抱える浅草にまた新たな魅力が加わります。それが、2019年10月25日(金)より浅草六区ブロードウェイ商店街で毎週末開催されることになった「歩行者天国」。この歩行者天国では、毎週さまざまな大型イベントも開催されるといいます。

 銀座や秋葉原とはひと味もふた味も違う、新たな「歩行者天国」の試み。果たしてどういった内容となるのでしょうか。

浅草六区で開催される「歩行者天国」のイメージ。今後、毎週末開催されることになる(画像:都市商業研究所)



 今回開始される歩行者天国をはじめとした新たなプロジェクトは「浅草六区 – Connect with the world -(コネクト・ウィズ・ワールド)」と題するもので、その目玉は、毎週金~日曜・祝日に浅草六区周辺の歩行者天国に、全国各地の祭りや伝統芸能を中心としたイベントを誘致すること。これまで地方に行かないと見られなかったさまざまなお祭りが、毎週末浅草の街で気軽に無料で見ることができるようになるのです。

 さらに、毎週金・土・日曜日・祝日の11時から21時には、歩行者天国内に「TOMODACHI STREET」を開設。ここには最大19台のキッチンカーによる屋台が出店し、さまざまな味を楽しむことができます。

 このキッチンカーにはキャッシュレス決済端末と12言語に対応したモバイルセルフオーダー機能「Putmenu(プットメニュー)」を導入。さらに、道路上に設置されるテーブルには翻訳機を置くなど(12月予定)、外国人にも優しく、また日本人客とっても「気軽に国際交流が楽しめる」という、唯一無二の街になりそうです。

 このほか浅草六区ではこれに合わせて、日本たばこ産業(JT)との連携により街の美化や放置自転車問題解決を目指す「新煙(しんえん)組」の組織化や喫煙スペース「NO SMOKING LOW HEAT ONLY」の整備なども実施される予定となっており、美しい街を維持するための取り組みも強化されます。

「興行街」の活気を取り戻せ

 それでは、どうして浅草六区ブロードウェイ商店街が「祭りの誘致」に取り組むのでしょうか。それには「浅草六区が辿ってきた歴史」が深く関わっています。

 浅草六区一帯はかつて劇場や映画館など娯楽施設の集積がみられ、永年に亘って「日本一の興行街」として名を馳せてきました。しかし、テレビの普及などエンターテイメントの多様化により劇場や映画館は相次ぎ廃業。2012年には最後の映画館が閉館するなど、地盤沈下が進んでいました。

 その一方で、2005(平成17)年8月には六区エリアにつくばエクスプレス浅草駅が開業。活性化の機運も高まり、2011年3月には建築規制の見直しによる再開発の促進を目指した台東区の条例「浅草六区地区・地区計画」が施行。浅草地区の外国人観光客の増加もあって、2013年12月には「ドン・キホーテ浅草店」が、2015年12月には大型アンテナショップ「まるごとにっぽん」が開業するなど、大手資本による投資が相次ぎみられるようになり、これに並行して無線LANの整備や観光案内所の設置なども進められてきました。

歩行者天国が開催される「浅草六区ブロードウェイ」。2013年に開業したドン・キホーテでは外国人観光客の姿も多い(画像:都市商業研究所)



 今回の「浅草六区 – Connect with the world -」の開始は、9月30日(月)に浅草六区エリア一帯が国家戦略特区の道路占有事業に認定されて歩行者天国の実施や道路上でのイベント開催が可能になったことによるもの。

 今や浅草は外国人観光客にとって「東京で外すことのできない見どころ」として有名になっており、台東区全体の観光客総数も2008(平成20)年の約3934万人から2018年には約5583万人に、訪日外国人観光客数も2008年の約191万人から2018年には約953万人に増えるなど、国内外からの観光客は年々増加。雷門や仲見世では多くの外国人観光客を見かけるようになりました。

 一方、東京メトロ・都営・東武浅草駅や雷門から歩いて10分ほどの距離がある浅草六区まで来る外国人観光客は、「ドン・キホーテで買い物をして帰る」だけの人も多い印象で、今年に入っても浅草ROX4階の「浅草六区ゆめまち劇場(旧・浅草コシダカシアター)」が閉館、昭和歌謡劇団「虎姫一座」が活動を休止するなど、「興行街」としての再生は道半ばという状態が続いていました。

 つまり、今回の浅草六区の取り組みは、祭りという興行を通し、かつての「興行街」であった時代の活気を取り戻すことを大きな目標としているという訳です。今後、浅草六区において「毎週末の歩行者天国」が定着し、世界各国の人々で大きな賑わいを見せるようになるかどうかが注目されます。

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