東京の深刻な人手不足を乗り越える――最新求人アプリが目を付けたのは、ユーザーの「直感力」だった

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東京の深刻な人手不足を乗り越える――最新求人アプリが目を付けたのは、ユーザーの「直感力」だった

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求人サイトで募集しても効果がない――そんな状況を変えるかもしれないアプリがこの度登場しました。

飲食店の80%、小売の60%が人手不足

 超高齢化社会に突入している日本。2030年には「2030問題」と呼ばれる深刻な労働力不足に陥ることが予想されており、各企業や店舗による人材の争奪戦が繰り広げられています。

業務に追われる飲食店従業員のイメージ(画像:写真AC)



 その中でも、帝国データバンクが2019年7月に発表した「人手不足に対する企業の動向調査」では飲食店の80%、小売の60%が人手不足と回答するなど、特に飲食・小売業界における問題が深刻化しています。

 こうした人手不足に拍車をかけるのが、昨今の求人広告のありかた。インターネット求人媒体の拡大によって求人掲載数が膨大となり、応募者の“検索疲れ”や候補を選べないといった問題が起こっています。特に東京のような都心では、応募者も店舗数も多いが故にこうしたミスマッチが顕著になっているそう。

「電車に乗りたくない」というニーズに対応

 そんななか、タイムゲート(港区六本木)は企業と求職者双方の課題を解決するための新型求人アプリ「グーバイト」を2019年11月7日(木)にリリースしました。一般的な求人サイトに見られる多すぎる情報やアルバイト探しの手間を排除し、効率よくバイトを探せるアプリとなっています。

新型求人アプリ「グーバイト」の記者会見の様子。画面右がタイムゲート取締役社長の井上久美子さん(画像:アーバンライフメトロ編集部)

 求職者が直感的にバイトを選ぶことができるグーバイト。アプリを開くと自宅や希望地といった現在地情報から、徒歩・自転車の12分(2.5km)、6分(1.2km)、3分(630m)に限定した求人情報のみを表示。地域や沿線を選択したりフリーワード、職種等のチェックボックスを入れたりする必要はありません。

 同社が行った「アルバイト探しに重要視すること」についての調査では、大学生のトップ3が「給料(時給)」「勤務地」「業種」、主婦のトップ3が「勤務地」「シフトの自由度(職場の雰囲気)」「時短勤務可」という結果になりました。特に東京のような都心では、「バイトの通勤で電車を使いたくない」「通勤時間を短縮したい」と考える求職者は多いと考えられます。

直接のやり取りはトークルームを使用

 店舗スタッフなどが撮影した写真や6秒動画が、「求人候補」としてインスタグラムのようなサムネイル式で表示されます。また、アルバイト内容や時給といった募集条件は文字ではなくアイコンになっているので、スマホに慣れた若年層が親しみやすい操作性を実現しました。

新型求人アプリ「グーバイト」の画面(画像:アーバンライフメトロ編集部)



 さらに、事前に入力した簡単なプロフィール情報が応募先に自動送付されるため、履歴書は不要。面接日時はテンプレートのスクロール式となっており、求職者は設定された日時から選ぶだけです。

 面接日の変更など、直接のやり取りが必要になった際にはチャットアプリのようなトークルームを使って行うため、「履歴書作成や電話でのやり取りが面倒だから面接に行くまで気が進まない」といった求職者のニーズに対応した仕様となっています。

東京の飲食店を悩ませる経費を大幅削減

「店舗側がいくら求人掲載にお金をかけても人が集まらない。やっと採用できても合わなくて1週間で辞めてしまう状況を数多く見てきたときに、もっと店舗側の負担が少なく人材を募集できないかと考えた」と、同社の取締役社長である井上久美子さんは開発経緯を語ります。

 家賃や人件費などで経費がかさむ東京の飲食店では、求人募集のための広告費も大きな出費。媒体担当者が素材写真を撮影したり、募集内容の記事を執筆したりする一般的な求人媒体では、1週間の掲載で10万円以上の費用がかかるケースもあるそうです。

 しかしグーバイトは業界初のサブスクリプション広告となっており、何度求人内容を変えても月額5800円で利用可能。店舗側は掲載したい情報やコメントを選択肢の中から選択するだけで求人情報が公開できるため、求人広告作成のための労力を大幅に削減しています。

求職者の心理的ハードルを下げつつ安全性を担保

 井上さんは、「新宿区や渋谷区、港区などの飲食店激戦区は、時給が高くてもとにかく人が集まらない」と東京の飲食店におけるアルバイト採用の難しさを危惧します。毎回1,000円以上の交通費を支給することでなんとか遠方から働きに来てもらうなど、人を集めるための経費が飲食店を圧迫しているケースも少なくありません。

「近隣に住むアルバイトを探している求職者とマッチングができれば、店舗側はその分、時給のアップができる。時給がアップすれば人も集まりやすくなるはず」と井上さんはサービスの存在意義について話しました。

店舗側はウェブ面接NG

 一方、手軽に求人広告が掲載できるグーバイトですが、それゆえに「本当に信頼できる情報なのか?」といった点が懸念されます。昨今は東京や大阪といった首都圏を中心に、SNS等で高額報酬を謳って特殊詐欺などの犯罪行為をさせる「闇バイト」の募集告知も横行。闇バイトに騙される若年層の増加が社会問題となっています。

 グーバイトは、公序良俗に反したり怪しい言葉が自動的に排除されるシステムになっているだけでなく、店舗の位置情報を取ったり店舗側が自由執筆した文章は、同社のチェック機能や確認によって安全性や信ぴょう性を担保しているそう。

 店舗側にはウェブ面接による採用をNGとしており、「マッチング自体はアプリでできても、実際に人と人が会って話すことで店舗側は本当に採用するかどうか、求職者側は本当に働くかどうかを決めることで早期離職を防いでほしい」と語りました。また、「グーバイトで選べるお店はすべて徒歩圏内。選ぶ方も、近所だからこその安心感があるはず」と、アルバイト探しにおける求職者の心理的負担に寄り添っていました。

 同アプリが飲食店の慢性的な人手不足を解決する糸口となるのか、今後に注目です。

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