価格は通常の1.6倍 赤坂にかつて存在した「高級吉野家」を振り返る

1985年5月にオープンした「特選吉野家あかさか」について、ルポライターで著作家の昼間たかしさんが解説します。


店の雰囲気、あまりにも高級過ぎだった

 果たして、高級牛丼はどんな味だったのでしょうか。フリーライターの田沢竜次さんの著書『東京グルメ通信』(主婦と生活社、1985年)には、このように書かれています。

「やけに底の深い牛丼を持ち上げると、おや確かに吉野家牛丼の“匂い”がする。材料も同じ牛肉 + 玉ネギコンビだ。さすがに牛肉は、脂身がほとんどなく、しっとりと柔らかい。漬け物のレイアウトも美しい。紅ショウガの入った容器だって重々しいのだ。こんなムードだからして、ガツガツと一気食いってなわけにもゆかず、どんぶりパワーも心なしか気落ちしているようだ。なんか“場違い”なのよね」

 いつも大急ぎでかきこむ牛丼とは違う、独特の高級感が伝わってくる文章。田沢さんは「肉質もアップしていて、確かに美味かった」といいます。しかし、普段の吉野家に慣れていると場違い感もありました。というのも、店の雰囲気があまりにも高級過ぎたのです。

「通常の吉野家とは違う高級そうな深い丼に入った牛丼が、朱塗りのお盆で運ばれてくるし、従業員が絣(かすり)の着物を着ているし……ちょっとした和食処……いや、ハリウッド映画に出てくる、なんか間違った日本そのまんまだったんです」(田沢氏)

大人気の「超特盛」牛丼(画像:吉野家ホールディングス)

 牛丼というのは、あくまで庶民の食べ物。より上質の味で高級感をアピールしても魅力を感じる人は少なかったようで、高級吉野家はわずか数年で閉店してしまいました。安くておいしい牛丼をもっとたくさん食べたいという欲求を満たしてくれる超特盛の成功には、こうした失敗の経験があるのかもしれません。

 なお、高級吉野家は今も別の形で存在しています。それが国会議事堂内にある吉野家・永田町一丁目店です。和牛をふんだんに使った1200円の牛重は、一般人が勝手に入ることができないレアな店舗として知られています。


【調査結果】牛丼店は「リピート客」がとても多かった 牛丼はやっぱり庶民の食べ物?

画像ギャラリー

/wp-content/uploads/2019/10/191029_yoshinoya_03-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2019/10/191029_yoshinoya_04-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2019/10/191029_yoshinoya_01-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2019/10/191029_yoshinoya_02-150x150.jpg

New Article

新着記事

Weekly Ranking

ランキング

  • 知る!
    TOKYO
  • お出かけ
  • ライフ
  • オリジナル
    漫画