90年前の威厳そのままに――重要文化財「日本橋高島屋」の魅力を語りつくす
2019年10月21日
お出かけ令和の時代を迎えた今も、1933(昭和8)年建築当時の威風を守り続ける、中央区日本橋の老舗百貨店「日本橋高島屋」。館内を見渡せば、設計を手がけた日本近代建築家たちの哲学を随所に読み取ることができます。都市探検家・黒沢永紀さんがアテンドします。
擬宝珠(ぎぼしゅ)を頂くエントランス支柱
その後、高橋貞太郎による増築計画があったものの、戦時体制へ突入して頓挫。増築計画が復活したのは戦後になってからのことでした。そしてこの増築を担当したのが村野藤吾です。
村野藤吾は、総タイル張りの元祖ともいえる近三ビルや、シンプルながら細かなディテールが際立つ日生劇場の設計で知られる、これまた日本建築界の重鎮。1952(昭和27)年から4度にわたる増築は、オリジナルの雰囲気を損なうことなく継承しながらも、しっかりと時代を反映させたものでした。
日本橋高島屋のびっくりするエピソードといえば、屋上動物園でしょうか。戦後すぐの1950(昭和25)年、タイから遥々やってきたゾウの「高子」が高島屋の屋上で飼われることになったのです。
クレーンで吊り上げられた高子は、しばらく高島屋の屋上で人々を楽しませていましたが、1954(昭和29)年に上野動物園へ引き取られることに。高島屋から出るときは、なんと店内の階段を歩いて降りたというから、また驚きです。
そんなエピソードを持つ日本橋高島屋が、国内の百貨店で初めて国の重要文化財に指定されたのは2009(平成21)年。文化財指定の最大のポイントは、ふたりの著名な建築家によるコラボレーションにもかかわらず、しっかりとした連続性があり、総合して百貨店建築の歴史を今に伝えている点だったといいます。
それでは、実際に日本橋高島屋を見ていきましょう。

まずは外観から。総タイル張りで、弧を描く角の処理は、昭和初期建築の象徴的なスタイルです。特に、エントランス上部の意匠は凝っていて、柱の上には大きな擬宝珠(ぎぼしゅ)が載ります。擬宝珠とは、日本武道館のてっぺんで知られる玉ねぎ型の装飾で、橋や神社、寺院の階段などに使われる、伝統の建築装飾です。
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