新橋SL広場は「待ち合わせの場所」だけじゃない! じっくり歩いてわかるその魅力とは

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新橋SL広場は「待ち合わせの場所」だけじゃない! じっくり歩いてわかるその魅力とは

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浦島茂世

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東京の有名な待ち合わせ場所のひとつ、新橋駅西口のSL広場。もし、待ち合わせの時刻より少し早く到着したのなら、ぐるりと広場を眺めてみるのも楽しいかもしれません。SL以外にも、いろいろ見どころがあるようです。美術ライターの浦島茂世さんが解説します。

豆知識1 広場のようで、広場ではない

 新橋駅で西口改札を出た先の、おなじみ新橋駅前SL広場。実際に行ったことはなくても、テレビ番組の街頭インタビューがしょっちゅう行われているスポットといえば思い浮かぶ人も多いかと思います。決して広くはないこの広場ですが、よくよく観察してみると案外見どころの多い場所でもあるのです。

 SLが目印のこの場所の正式名称は、「新橋駅西口広場」。広場という呼び名ではありますが、実際には道路法で「道路」と決められている場所です。戦後、闇市が立ち並び食料や衣料品を求める人であふれたこの周辺も、少しずつ区画整理が進み、1971(昭和46)年に現在の広場の形に整備されました。

新橋駅西口広場のシンボル、SL(画像:浦島茂世)



 その翌年の1972年、日本の鉄道発足100周年を記念したこの年に、「C11形蒸気機関車」が国鉄から港区へ無償貸与されました。そのSLは1945(昭和20)年に製造された「タンク式」と呼ばれるタイプで、現役時代の任務地は兵庫・姫路機関区。SLとしては小ぶりの体躯だったため近距離路線や駅構内の貨車の入れ替えなどで活躍し、合計100万km超を駆け抜けました。引退後、1972年に現在の場所に設置されて以来、半世紀近くにわたって新橋の移り変わりを見守り続けています。

 誰かとSL前で落ち合うときは、せっかくなので待ち合わせ時間を12時か、15時か、18時にしてみることを提案します。1日3回、この時刻にSLから汽笛が鳴るのを聴けるからです。往年を思わせる汽笛の音を堪能しながら、ふと、SLが鎮座する台座に目を向けてみると、それはレンガ造りの高架下ガードをモチーフにしたデザイン。SL設置にかかわった当時の人々の、熱い思い入れを垣間見るような気がします。

 もうひとつ、ちょっとした豆知識を。新橋駅からJR山手線で6駅の上野・国立科学博物館(台東区上野公園)の敷地内には、あの有名なSL「D51(通称デゴイチ)」が設置されています。ですので新橋のSL広場でC11をじっくり目に焼き付けた後、山手線に飛び乗って上野まで行けば、1日に2種類のSLを見比べることができるのです(しかも無料で)! まさに東京ならではの楽しみ方ではないでしょうか。

豆知識2 SL広場は、SLだけではない

 ちなみに、SL広場にあるのはSLだけではありません。いろいろな彫刻・モニュメントが立ち並んでいるのをご存じでしょうか。

 まずひとつ目は、『乙女と盲導犬像』。もともとは日比谷公園にあったこの銅像は、盲導犬の普及活動のため、もっと目立つ場所へ置こうということで1969(昭和44)年に新橋へ引っ越してきました。SLがやってくる3年も前からこの広場にいる古参、重鎮の銅像なのです。

 この像の設置をきっかけに、日本初の盲導犬パレードや募金活動が行われるようになりました。ちなみに現在、盲導犬の犬種はラブラドール・レトリバーが主流ですが、この像が制作された1960年代はシェパードが主に採用されていました。そのため、この像の盲導犬もシェパードです。シュッと伸びる鼻先がとっても理知的な印象です。

SLのそばに立つ、『乙女と盲導犬像』(画像:浦島茂世)



 続いてふたつめ『愛の像』は、彫刻家・瀬戸団治の作品。かつてSL広場の中央には大きな噴水があって、この像は噴水の中央部分に設置されていていました。噴水は2006(平成18)年に撤去されましたが、この像だけが広場に残ることとなりました。噴水があったころは、酔っぱらったサラリーマンが水の中に落っこちることも少なくなかったそうです。

 そしてもうひとつが、『愛のライオン像』です。東京新橋ライオンズクラブの設立25周年を記念して、1982(昭和57)年に設置されました。ライオンの横にある銀の筒は募金箱になっていて、年に1回集金されて港区の社会福祉協議会を通じて地域福祉の促進に利用されています。港区社会福祉協議会(港区六本木)によると、2018年度の募金額は33万5983円だったとのこと。けっこうな額です。さすが新橋のサラリーマン! 人情を感じます。

豆知識3 冬はゴージャスSLに変身

 そして何といっても、これからの季節もっとも楽しみなのがSL本体のイルミネーションです!

「新橋イルミネーション」は1999(平成11)年からスタートした冬のイベント。2019年で20周年を迎えて、すっかり新橋の冬の定番となりました。2018年は「天空のクリスマス」をテーマに、2万5000個のLSD電球でSLをデコレーションし、オリジナルの音楽やシャボン玉マシーンまで動員してSLを盛り立てました。

LEDのイルミネーションを施されたSL(画像:愛宕一之部連合町会)



 地元の「愛宕一之部連合町会」によると、このイルミネーションの主目的はチャリティです。現在は、イベント開始日などにシャンパンサービスなどを行い、募金を募っているそうです。

 イベントが始まったころはまだ、SLの飾りつけは今より質素だったようです。当時の写真を見ると、SLの前にズラリと並べられたクリスマスツリーが逆にSLを覆い隠してしまっているようで、ちょっと切ない……。でもこの20年の間にテクノロジーが進歩して、LED電球が市場に出回るようになり、現在のようなイルミネーションの形にたどり着いたといいます。発熱量が少ないLEDは、SLにもダメージを与えにくく最適。イルミネーションのデザインは、専門の会社などが参加するコンペで決められるそうです。2019年はどのようなデザインになるのでしょう?

 ところでイルミネーションと並ぶ光のアートといえばプロジェクションマッピングも人気ですが、SL広場のSLに関してはプロジェクションマッピングは導入しないそうです。「黒いボディに光を当てても、いまいち格好良くみえないんですよ」とのこと。

 2019年は、11月14日(木)からイルミネーションがスタートするそうです。キラキラ光るSLはとても幻想的。待ち合わせの相手が少しぐらい遅れても、キラキラSLを見上げながら、まもなく過ぎ行く2019年に思いをはせてみるのもいいかもしれません。

 ということで、新橋SL広場は単なる駅前広場ではなく、いろいろ見どころのある楽しい場所です。待ち合わせ場所より早めに広場へ行って、周囲をぐるっと回って鑑賞してみましょう。

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