炒めたチャーシューとたっぷり刻みネギの波状攻撃 神田「お茶の水大勝軒」のまかない飯【連載】東京レッツラGOGO! マグロ飯(1)

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炒めたチャーシューとたっぷり刻みネギの波状攻撃 神田「お茶の水大勝軒」のまかない飯【連載】東京レッツラGOGO! マグロ飯(1)

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下関マグロ

サンポマスター、食べ歩き評論家

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都内散歩と食べ歩きにくわしいフリーライターの下関マグロさんが、都内一押しの「マグロ飯」を紹介します。

初めて食べた大勝軒のつけ麺

 2006(平成18)年12月25日(月)、筆者(下関マグロ。フリーライター)は記事を書くためにラーメン店「東池袋大勝軒」の長い行列に並んでいました。2007年3月20日(火)に再開発のため店を閉めるというので、編集担当のE君とやってきたのです。

お茶の水大勝軒で出されている「大勝軒のまかない飯」(画像:下関マグロ)



 実は大勝軒でつけ麺をいただくのはこの日が初めて。E君からつけ麺の記事を書きましょうと言われていたのですが、個人的にはあまり好きじゃないので先送りになっていたのです。

 しかし有名店が閉店するというので、一度くらい食べておくかとやってきました。年が明けて閉店が近づくに連れ、行列は大変な長さになっていたようですが、この日はいつもより少し長いくらいの行列だとE君は教えてくれました。行列は、昔ながらの店舗を取り囲むようにできていました。

多くの店を残した創業者の山岸さん

 つけ麺(東池袋大勝軒では「特製もりそば」と呼んでいました)をいただきます。つるつるの麺が魚介系のつけだれにからんで、たまらなくおいしかったですねぇ。これまでつけ麺が苦手だと思い込んでいたのは何だったんだと、ショックを受けました。

赤いテントに店名とともに「特製もりそば」という文字が見える(画像:下関マグロ)

 その後お店は閉店し、残念ながら創業者の山岸一雄さんは2015年4月1日(水)に亡くなりました。彼は多くの弟子を育てて、のれん分けも許しました。そういう意味では、山岸さんは亡くなりましたが多くのお店を残したと言えます。

山岸大勝軒が残した意外なもの

 その後筆者は、東池袋大勝軒で修業した者たちがのれん分けしていったお店を一軒ずつまわり、つけ麺を食べ歩きました。そんなあるとき、筆者は意外なメニューに出会います。それは「大勝軒のまかない飯」(420円)でした。出しているお店は「お茶の水大勝軒」(千代田区神田小川町)。

昔懐かしい店舗をぐるりと囲むように行列ができていた(画像:下関マグロ)



 ご飯の上に炒めたチャーシューの切れ端や刻みネギ、生卵がのっかっています。よく混ぜて食べると、これが実にうまいのですよ。

 店主の田内川真介(たうちがわ しんすけ)さんに聞けば、「実際、東池袋大勝軒で修業中に食べていたまかない飯をそのまま再現したものなんですよ」とのこと。取り壊される前の店舗で、修業に励んでいた若者たちはこんなまかない飯を食べていたんですね。

 そんなことを思いながらいただくと、胸が熱くなります。考えてみれば「特製つけそば」も、山岸さんがまかないとして食べていたものを客が「それをくれ」というのに応えて開発したメニューなのです。

 そして、このお茶の水大勝軒では山岸さんが創業した当時の東池袋大勝軒のメニューを復刻しています。実は創業当時の東池袋大勝軒は「町中華」であり、特製つけめん以外のメニューも出していました。

 その後メニューを絞り込んだ理由について、田内川さんはこう説明します。「すぐに行列店になってしまったのでメニューを絞り込んでいったんだと思います」。

2017年の神田カレーグランプリで優勝

 お茶の水大勝軒を開業後、山岸さんからかつてのメニューを復刻させるようにお願いされた田内川さんが、まず取り組んだのがカレーライス(820円)です。

 当時山岸さんはまだご存命で、味のチェックやアドバイスをしてくれたそうです。そういう意味では、まさに山岸さんのカレーライスということになります。いただいてみれば、どこか懐かしいけれど、新しさも感じるおいしいカレーライスでした。

 そして、2017年の神田カレーグランプリでこの復刻版カレーライスが優勝することになるのです。山岸さんはおいしいカレーライスも残してくれたわけですね。

 ちなみに山岸さんは、のれん分けを許すときは、その土地に合わせて自分なりに味を開発しなさいと言っていたそうです。しかし、田内川さんだけには「真介、お前は俺の味を変えるな」と常々言っていたとか。「たぶん、自分の味がどこかに残っていてほしかったんだと思いますよ」と田内川さん。

 なるほど、こちらの店は山岸さんの味がそのまま残っているお店だと言えるでしょう。

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