パン好きが殺到! 日本最大級のフェス「世田谷パン祭り」が抱える課題と新たな取り組みとは

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パン好きが殺到! 日本最大級のフェス「世田谷パン祭り」が抱える課題と新たな取り組みとは

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笹木理恵

フードライター

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食関連のイベントが各地で催される秋――。来場者数5万人を誇る日本最大のパンイベント「世田谷パン祭り」が2019年も開催されます。年々増える来場者数や、ゴミ問題などの課題に対し、どう向き合いイベントを成長させてきたのかをフードライターの笹木理恵さんが取材しました。

全国で増えるパンフェス 課題も浮き彫りに

 季節はいよいよ、食欲の秋。各地でさまざまな食のイベントが開催されるシーズンでもあります。

過去に開催された「世田谷パン祭り」の様子(画像:世田谷パン祭り実行委員会)



 なかでも年々、各地で規模を拡大しているのが、パンのイベント。2011(平成23)年に、日本人の米とパンの消費量と逆転して以来、下降をたどる米に比べ、パンは堅調に消費が伸びており、糖質制限ダイエットの逆風を受けながらもパンの人気は極端には落ち込んでいません。最近では、食パン専門店など新たなブームも誕生し、パンのイベントも全国各地で年間50以上も開催される勢いを見せています。

 そんなパンフェスの火付け役ともなったのが、いまや日本最大級のパンイベントとなった「世田谷パン祭り」です。「世田谷はパンの街」をコンセプトに、世田谷をはじめ全国のベーカリーが出店するこのイベントは、2019年で9回目。2011年開催の初回は7000人だった来場者数は、2018年度は5万人を記録。出店数も2日間で240店舗という大規模イベントに成長しています。

来場者の長い行列と待ち時間が問題に

 しかし来場者が増えるにつれ、課題や問題点も浮き彫りになっています。なかでも、運営サイドが毎年もっとも頭を悩ませるのが、来場者の長い行列と待ち時間です。もちろん、年を追うごとに来場者の分散を図るための対策が強化されており、2015年からは開催期間を2日間とすることで、混雑の緩和に成功。

過去に開催された「世田谷パン祭り」の様子(画像:世田谷パン祭り実行委員会)

 さらに会場も、池尻小学校(世田谷区池尻)の校庭と体育館、IID世田谷ものづくり学校(同)だけでのスタートでしたが、翌2012年からは世田谷公園(同)も加わり、新たな導線を確保できました。世田谷パン祭りが年々盛り上がりを見せ、地域活性化に繋がるイベントとして認知を得られたことで、街の理解も広く得られるようになったのだそうです。

「世田谷パン祭り」広報担当の寒河江麻恵さんは2019年の対策について、

「2018年も来場者数は5万人となりましたが、ボランティアスタッフの適正な配置や導線の工夫などで、待ち時間は2018年よりも軽減されたように感じています。2019年は例年に続き、世田谷公園もメイン会場としてエリアを拡大しパンマーケットを開催するほか、屋外ワークショップや講座を開催する『世田谷パン大学』などの学びの場もさらに充実させ、複数のエリアを回遊していただけるような導線を考えています」。

と説明します。

フードロスへの新しい取り組み

 また、2019年新たな試みとして挑戦するのが、フードロスへの取り組みです。

「第1回の世田谷パン祭りでは、午前中に売り切れてしまう店が続出し、来場者の方にご迷惑をおかけしました。回を重ねるごとに、早い時間に売り切れてしまうという事態は減ってきたものの、イベント終了後に残ってしまう『ロスパン』が大きな問題となっていました」(寒河江さん)

 そこで2019年は、ロスパンをリサイクルするプロジェクト「Save The Bread Project」を導入。残ったパンを買収して提携企業に配布し、パンを受け取る社員からは任意の募金というかたちでお金を受け取り、集まった全額を東日本大震災の被災者支援と慈善団体「Save the Children」などに寄付するという取り組みを行う予定です。

過去に開催された「世田谷パン祭り」の様子(画像:世田谷パン祭り実行委員会)



 このプロジェクトを主宰するのは、世田谷の高級食パン専門店「ルセット」などを展開するイコールコンディション(世田谷区池尻)。ベーカリー業界全体の課題でもあるロスパンに、一石を投じる挑戦としても注目されています。

 さらに、ゴミの軽減やプラスチックを使わない対策にも着手し、マイバック持参の呼びかけを行うとともに、一部店舗ではさとうきびストローの導入を推進。環境負荷を減らし、サステナブル(持続可能)なイベントとして、未来の世田谷パン祭りにつなげたい考えです。

初のクラウドファンディングで、参加者の意識も高める

 そもそも「世田谷パン祭り」は、三宿エリアに点在する個人商店が中心となり結成された商店会「Mishuku R.420」が、地域の魅力を外にも広く伝えたいと企画したイベントが発端です。

過去に開催された「世田谷パン祭り」の様子(画像:世田谷パン祭り実行委員会)

 集客規模が5万人となった現在も、地元商店会と地域の人々を含むプロジェクトメンバーを中心に運営を行っており、まさに地域に根差したイベントとして成長している好例と言えます。近年は、商店会に加え200人ほどのボランティアスタッフで運営を行なっていましたが、2019年新たに募集したのが、クラウドファンディングを活用した一般の人からの活動支援です。

「2年前から、混雑解消の目的もあって優先入場券の販売を行なっていましたが、2019年はそれをクラウドファンディングの『マクアケ』を通して販売します。金額ごとに、パンの出店エリアへの優先入場券をはじめ、商店会で使えるクーポン券や、「シニフィアン シニフィエ」の焼き菓子、世田谷パン祭り限定バックなどを返礼品としてご用意。集めた資金は、運営費の一部に充てたいと考えています」(寒河江さん)

 2019年の「世田谷パン祭り」のテーマは、「New Bread Era(パン新時代)」。パンそのものの進化だけでなく、パンの消費行動や、原材料や流通などパンを取り巻く環境までが、新しい時代に突入しようとしている現在、イベントの持続可能性を探る「世田谷パン祭り」の新たな取り組みは、他のフードフェスにも大いに参考になるのではないでしょうか。

●「世田谷パン祭り2019」概要
開催期間:2019年10月13日(日)、14日(月・祝)
開催時間:11:00~17:00
会場:IID 世田谷ものづくり学校、世田谷公園、池尻小学校第2体育館、せたがや がやがや館、三宿四二〇商店会加盟店 ほか
入場料:無料

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