日本庭園の技法を取り入れた隅田川唯一の水上公園「中の島」とは何か?
2019年10月7日
お出かけ東京湾の奥座敷に佇む、小さなオアシス・中の島について、都市探検家・軍艦島伝道師の黒沢永紀さんが解説します。
中の島公園を歩く
現在の中の島は、南北115m、東西40m、周囲260mで、島の中央を清澄通りが寸断しているため、島への出入り口は両車線の脇にそれぞれ1箇所ずつ設けられています。
北側から入ると、深い木立に包まれた公園が広がります。なかば散乱しているかのように点在する石造りのベンチやテーブルの多くは、その劣化具合やデザインから、おそらく開園当時のものではないでしょうか。島の北端には大きな桜の木が育ち、春には格好の花見スポットとなることでしょう。

そして、公園の北エリアから相生橋のたもとへ近づくと、島の南エリアと通じるアンダーパスがあります。ただし、フラットなコンクリート敷きの通路ではなく、高さ50cmほどのコンクリート製の円柱が無数に並ぶ、ちょっと変わった通路に、少しとまどうことでしょう。円柱が密接しているので、歩行にそれほど苦労はしませんが、いわば飛び石のように進む形です。
これが前述の「潮入り」。特に大潮の満潮前後だけなので、普段は飛び石の効果がありませんが、それでも流れ込んだ水が残っていることが多く、フラットなものより、遥かに親水に長けた通路と言えるでしょう。
飛び石のアンダーパスを通り抜けると島の南側へ。弧を描く川縁付近には、飛び石通路と同様に潮入池が施工され、満潮時には隅田川河口の海水が入り込み、時には魚が泳いだりします。
池の中央には石造りの常夜灯があり、その奥に見える鉄骨の相生橋とともに作り出す光景は、鉄橋でありながら、一服の浮世絵のような印象すらうけます。
戦前の公園造りを知ることができる遺産
そして、中の島のハイライトとも言えるのは、この潮入池付近からの眺望です。正面に豊洲埠頭の高層ビル群、左に東京海洋大学、右に晴海埠頭を望む光景は、インスタ映え間違いなし。

さらに夜ともなれば、正面のビル群に灯がともり、隅田川を航行する屋形船が色を添える様子は、ときめく夜景のパノラマ。また火が灯った常夜灯越しに見るライトアップされた相生橋の光景も、とてもロマンティックです。
中の島はほんの小さな島ですが、単に水辺というだけでなく、海水が入り込む文字通りの親水公園。戦前の公園造りを知ることができる貴重な遺産ともいえるでしょう。月島駅から徒歩で5分とかからないにもかかわらず、訪れる人が少ない穴場スポット。気持ちいいウォーターフロントを、ぜひ独り占めしてください。
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