気鋭のショコラティエ・三枝俊介氏が語る「世界初 Bean to Bar ホワイトチョコ」の本物のおいしさ

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気鋭のショコラティエ・三枝俊介氏が語る「世界初 Bean to Bar ホワイトチョコ」の本物のおいしさ

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日本を代表するショコラティエ、三枝俊介さんが、青山にホワイトチョコレートのBean to Barブランド「ショコラティエ パレ ド オール ブラン」をオープンしました。自家製カカオバターから生み出すホワイトチョコレートのBean to Barは「世界初」とのこと。三枝さんをそこに駆り立てたものは何なのでしょうか。話を聞きました。

ホワイトチョコに特化した専門店をオープン、全ガラス張り!

 日本における、Bean to Bar(チョコレートをカカオ豆の焙煎から手がけて作る)の先駆者である三枝俊介さんは、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも紹介された、日本を代表するショコラティエのひとりです。

新しい工房でカカオバター作りを実演する三枝俊介さん(2019年9月30日、宮崎佳代子撮影)



 2019年10月1日(火)、同氏はオーナーシェフを務めるショコラ専門店「アルチザン パレドオール青山店」を、ホワイトチョコレートに特化したBean to Barブランド「ショコラティエ パレ ド オール ブラン」として、改装オープンしました。

 その前日、オープンに先駆けてメディアレセプションが開催され、三枝さんから直接話を聞きに同店を訪れました。

 地下1階にある店にはシャッターが降ろされていましたが、集まった記者たちへのお披露目にゆっくりとシャッターが上がって行くと、現れたのは工房とショップが通りから丸見えの全面ガラス張り。工房は店面積の3分の2を占め、そのインパクトに、道ゆく人たちも思わず足を止めて見入っていました。

 三枝さんは会の冒頭、同店オープンの経緯について次のように述べました。

「Bean to Barを始めて商品が自家製のものに切り変わっていくなかで、ホワイトチョコだけは自家製のものができませんでした。そこにジレンマを感じ、昨年、カカオバター用のプレス機を購入し、実験的に作り出しました。すると、色々な発見とともに謎も次々と出てきて、われわれの店の規模(年間10トンのチョコレートを製造)でたくさん数を作ってその答えを見出すことで、小さな店の10倍速で前に進んで行けるのではないか。そう考え、まずこの1年で得たノウハウを商品にして、店をオープンいたしました」

 自家製のカカオバターから生み出すホワイトチョコレートのBean to Barは「世界初」とのこと。三枝さんは工房内で、自家製カカオバターの作り方を披露しました。

Bean to Barのホワイトチョコ作りは何が難しい?

 自家製カカオバターの作り方は、まず、特注のオリジナルオーブンでカカオ豆を焙煎。その後、機械で皮を取り除いて細かく擦り潰します。この段階で、すでにカカオの良い香りが漂ってきました。これを機械に入れて攪拌し、ペースト状に。このカカオペーストをプレス機にセットした袋に流し込み、カカオバターを搾り出します。

プレス機から流れだす、自家製カカオバター(2019年9月30日、宮崎佳代子撮影)



 ダンディーで、一見近寄り難いオーラを放つ三枝さんですが、その実、親しみやすいお人柄。購入したばかりの900kgあるプレス機を、運搬時に倒してしまい、歪んでしまったというエピソードや、プレス機に蓋をせずに操作しようとして、「ウケ狙いです」と言いながら慌てて蓋をする様子が、記者たちの笑いを誘いました。

 プレス機から、最初はキャラメルのような色合いの濁りのある液体が流れてきましたが、しばらくすると透明感ある液体(バター)が流れ出てきました。ドロドロとしたカカオペーストが、圧搾によりバターとなって流れ出てくる様子は感動的。ここから不純物が取り除かれるまで数回濾(こ)して完成です。カカオバターは、豆の産地によって、色も香りも異なるとのこと。

 実演後の試食会の際、三枝さんに伺った話を以下に紹介します。

ーーなぜ、Bean to Barのホワイトチョコ作りは難しいのでしょうか?

 いいホワイトチョコを作るにはいいカカオバターを搾らないといけなくて、その原料調達が難しいんです。また原料の調整にしても、チョコレート自体の調整にしても、普通のチョコレートととは違うのも難点で、そういったハードルが何か所もあって、それを全部クリアしないといけません。ビターチョコとかいろいろなものを作ってきた経験値のある人でも、一筋縄でいかないものなのです。

ーー世界にはたくさんショコラティエがいますが、そこに挑戦する人が現れなかったのは、どうしてなのでしょうか?

 ホワイトチョコは、他のチョコレートよりもふた手間くらい余分にかかってしまうので、購入しやすい価格帯でそれをやろうとすると、なかなか採算性が合いません。また、これを他のものと一緒に作るとなると、非常に手間とコストがかかります。ですから、ホワイトチョコは専門店にするのが一番効率がいい。でも、そこまでしてやる意義を見出す人が今までいなかったということだと思います。

ーー三枝さんがそれをやろうと思われた根源に、どんな想いがあるのでしょうか?

 チョコレートはまだ誰もわかっていない部分、謎があって、今こういう立場や環境、経験値が与えられたなかで、自分がそれを明らかにするべきだと思ってのことです。

三枝さんにとっての「ゴール」とは?

ーー三枝さんのゴール(目指すところ)を教えてください。

 チョコレートのすべてを知ることは難しいですが、少なくとも自分がチョコレート作りで感じたものや今知りたいと思っていることを、他の人たち(後世)に伝えて行かないといけないと思っています。寿命も限界もあるので、そこまで精一杯、知り得たことを伝えていくことです。

「パレドオール ブラン」4個 2200円(税別、以下同)、8個 4200円(2019年9月30日、宮崎佳代子撮影)



ーー(ホワイトチョコを試食してみて)もう十分においしかったですが、まだまだ進化が期待できるということでしょうか。

 そうですね。ただ、今あるものは現時点では一番おいしいと思ってもらえるものを作ったつもりです。ホワイトチョコ自体は色々な商品がありますが、いいカカオバターで作ったものがそうでないものといかに味わいが違うか、「本物の味」を知っていただきたいと思います。ぜひ、食べて比べてみていただきたいですね。

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 商品は、ホワイトチョコのタブレットやボンボンショコラなどに加え、焼き菓子もライナップされています。タブレットは、カカオの産地別に商品を取り揃えています。

 どれもおいしく、なかでも記者は、フルーツ入りのボンボンショコラが最も気に入りました。「ブラックチョコだと、フルーツのテイストが強くなってしまいがちですが、ホワイトチョコだと、フルーツとチョコの味わいがバランスよく楽しめます」と三枝さんは話します。確かに、最初はフルーツの味わいが口の中に充満し、その後にホワイトチョコ自体の風味が口の中にふわりと広がって双方の余韻を残します。まさに、絶品でした。

「目指すものに向かって、選ばなかったものを捨て去ることで前に進める」

『プロフェッショナル 仕事の流儀』で三枝さんはそう語っていました。それが時代と世代を超えるチョコレートの味わい生むと。その言葉を体現すべく、他を捨てて作り上げたbean to barのホワイトチョコレート。その新世界の味わいは、並々ならぬ「本物のおいしさ」に満ちていました。

●「ショコラティエ パレ ド オール ブラン」 概要
・場所:東京都港区南青山1-1-1 新青山ビル東館地下1F
・営業時間:平日 10:00〜20:00
・定休日:日曜
・アクセス:各線「青山一丁目駅」直結

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