日本一の超高層ビルができる「麻布台」ってどこ? 気になる再開発の詳細にも迫る

  • スポット
  • 神谷町
日本一の超高層ビルができる「麻布台」ってどこ? 気になる再開発の詳細にも迫る

\ この記事を書いた人 /

若杉優貴のプロフィール画像

若杉優貴

都市商業研究所

ライターページへ

日本一の超高層ビルを建てるために工事が急ピッチで進められている麻布台エリア。同エリアとビルの詳細について、都市商業研究所の若杉優貴さんが解説します。

日本一の超高層ビルが建つ港区麻布台

 みなさんは「日本で最も高い超高層ビル」と聞くと、2014年に竣工した高さ約300mの「近鉄・あべのハルカス」(大阪市阿倍野区。2014年から1位)や、それまで約20年間にわたってナンバーワンだった「横浜ランドマークタワー」(横浜市西区)、日本最初の超高層ビルであった「霞が関ビルディング」(千代田区霞が関)、池袋のシンボル「サンシャイン60」(豊島区東池袋)などを思い浮かべるのではないでしょうか。

 こうした超高層ビルたちは、いずれも街の、そして地域のシンボルとして多くの人々に親しまれてきたものばかりですが、次に「日本一」を塗り替える建物が誕生する地は港区の「麻布台」です。地元民以外は、あまりピンと来ないエリアかも知れません。

大型再開発が始まった麻布台の街並み。左側に見えるのは「アークヒルズ仙石山森タワー」。写真のエリアは大部分が再開発区域外(画像:都市商業研究所)



 具体的なイメージが沸かない場所に生まれる「日本一高い超高層ビル」。果たしてどのようなものになるのでしょうか。

そもそも麻布台って、どこ?

 日本一高い超高層ビルが生まれる港区麻布台は、東京タワーの西側に位置する町。「麻布」と言っても、麻布十番商店街からは北に徒歩15分ほど歩くことになります。

 日比谷線ユーザーなら「神谷町駅から赤羽橋方面に5分くらい歩いた場所」、南北線ユーザーなら「六本木一丁目駅と麻布十番駅の中間地点」、首都高ユーザーなら「飯倉ランプの東側」、そして東京タワーを訪れたことがある人には「タワーから富士山の写真を撮るときに足元に写り込む場所」といえば分かりやすいかも知れません。

赤枠で囲われた部分が港区麻布台(画像:(C)Google)

 何かとイメージが沸きづらい麻布台ですが、この地に日本一の超高層ビルを建設するのは森ビル(港区六本木)と日本郵政(千代田区大手町)が中心となった「虎ノ門・麻布台地区市街地再開発組合」で、開発名は「(仮称)麻布台・虎ノ門プロジェクト」です。再開発エリアは約8.1ha、総事業費は実に約5800億円、完成時の就業者数は約2万人、居住者数約3500人というビッグプロジェクトになります。

 なお、再開発地の中心にあった歴史的建造物「日本郵政グループ飯倉ビル」(旧逓信省貯金局・郵政省本庁舎)は、今回の再開発に伴い惜しくも解体されています。

再開発は既存の「ヒルズ」に相乗効果を生む

 森ビルは、港区でアークヒルズ(通称:赤坂アークヒルズ)、六本木ヒルズ、虎ノ門ヒルズ、アークヒルズ仙石山森タワーなど数多くの超高層複合ビルの開発をおこなっていますが、実はこれらのほぼ中心地点となるのが麻布台です。

東京タワーから西を見たとき足元に広がる町が麻布台(写真中央)。タワーからの景観も大きく変わることになる(画像:都市商業研究所)



 森ビルにとってみれば、麻布台エリアの再開発は既存の「ヒルズ」にとっても大きな相乗効果を生み出すこととなるため、「森ビルの集大成」ともいうべき規模になったといえるでしょう。

 ちなみに、森ビルの辻慎吾社長が2019年8月に行った記者会見によると、建物名が「ヒルズ」になるかどうかを含めて「正式名称は未定」とのことですが、記事中ではこれ以降「麻布台ヒルズ(仮)」と表記することとします。

高層階に住宅とオフィス、低層階にスーパーなど

「麻布台ヒルズ(仮)」は大きく分けて「A街区」、「B-1街区」、「B-2街区」、「C街区」の4街区で構成されており、2022年度末(2023年3月)の竣工をめざして工事が進められています。

再開発エリア図。麻布台は多くの「ヒルズ」の中心にあるエリアだ。(画像:森ビル)

 そのうち、「日本一高い超高層ビル」となるのは「A街区」。地上64階、地下6階、塔屋2階建てで、高さは約330m。ここには、高層階には住宅とオフィスが、低層階にはスーパーマーケットを中心とした商業施設などが入居する予定です。

日本最高層のヒルズは「緑」と「国際色」豊かに

「B街区」はA街区の北側、南北線の六本木一丁目駅東側にあたり、そのうち「B-1街区」には地上64階、地下6階、塔屋2階、高さ約263mの、「B-2街区」には地上53階、地下6階、塔屋2階、高さ約233m、総戸数約1300戸の超高層タワーマンションが建設されます。

「虎ノ門・麻布台プロジェクト」の完成イメージ(画像:森ビル)

「C街区」は神谷町駅西側にあたり、8階建て以下の低層4棟が建てられるほか、現在再開発エリアに出店している店舗や寺院などが移転します。

 麻布台はこれまで「駅から少し遠く、坂や路地も多い」という不便なイメージがありましたが、再開発後は地下通路で東京メトロ日比谷線神谷町駅、東京メトロ南北線六本木一丁目駅と直結されるため、アクセスも格段に向上します。

展望施設なし、最高層部分の数フロアは「住宅」

 森ビルの超高層ビルといえば、下層部分に広い緑地を確保する「垂直の庭園都市」と称される手法が定番ですが、この「麻布台ヒルズ(仮)」でも6000平方メートルの「中央広場」をはじめとして約2万4000平方メートルもの緑地が設けられ、散策のための遊歩道も設置されるほか、低層部分には屋上緑化もおこなわれる計画となっています。

 鎮守の森が桜の名所として有名な西久保八幡神社(港区虎ノ門)は同じ場所に残るため、春には「お花見の名所」としても多くの人が訪れることとなるでしょう。

再開発エリアの平面・立面図。多くの緑地が設けられる(画像:森ビル)



 麻布台といえば、再開発地区の向かい側にあるロシア大使館をはじめとした外交関連施設が多くあり、外国人を多く見かける街でもあります。森ビルの辻慎吾社長は「都市間競争に東京が勝ち抜くためには国際水準のオフィスや住宅などが必要だ」としており、館内にはインターナショナルスクールや外国人に対応した物販施設、医療機関なども設けられる計画で、他のヒルズに比べても外国人の姿が目立つ、より「国際的」な施設になることが予想されます。

 残念なのが、「日本一高い超高層ビル」の定番ともいえる展望施設や展望レストランは今のところ設けられないこと。最も高いA棟の大部分は商業施設とオフィスになりますが、最高層部分の数フロアは何と「住宅」になるということで、「日本一の展望」を味わうためにはこの住宅を「購入」しなければなりません。果たして販売価格はいくらになるのでしょうか。

麻布台ヒルズの「最高層」はわずか数年

 さて、ここまで「麻布台ヒルズ(仮)」を「日本一高い超高層ビル」と紹介してきましたが、実は「日本最高層」となるのは2023年から2027年度頃までの約5年間だけ。2027年度には、「麻布台ヒルズ(仮)」より約70mも高い超高層ビル「東京駅前常盤橋プロジェクト(仮称)」がJR東京駅の北東側に竣工する予定です。こちらは三菱地所が中心となって開発するもので、そのうち最高層となるB棟は高さ約390m。日本初となる「東京タワー超え」の超高層ビルとなります。

再開発のために解体されてしまった歴史的建造物「旧逓信省貯金局・郵政省本庁舎」(画像:都市商業研究所)

 次々と高さが塗り替えられる「日本最高層の超高層ビル」。「麻布台ヒルズ(仮)」や「東京駅前常盤橋プロジェクト(仮称)」が完成するころにはさらに次の「日本最高層」が計画されている可能性もあるでしょう。

 誰もが予想しなかった麻布台での日本最高層ビル誕生。果たして10年後、そして20年後には、一体どの町に日本最高層のビルが誕生しているのでしょうか。

関連記事