校庭の場所取り禁止? 地方出身者は理解できない、東京「運動会あるある」

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校庭の場所取り禁止? 地方出身者は理解できない、東京「運動会あるある」

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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上京した地方出身者が子どもの運動会で驚いた事例を、ライターで元塾講師の中山まち子さんが解説します。

地方出身ママが感じる「あるある」

 小学校の秋の大イベントで、まず思い浮かぶのは運動会です。この運動会、実は地域によって雰囲気が大きく異なるのをご存じでしょうか。

 大学進学や就職を機に故郷を離れ、東京で生活をするようになった筆者の知人たちの声をもとに、地方出身ママが驚く「東京の運動会あるある」についてご紹介します。

運動会のイメージ(画像:写真AC)



 東京の小学校の運動会は、「人工芝の校庭で行う」というイメージを持っている人は多いでしょう。筆者も小学生の頃、東京の従姉から芝の話を聞いたときは大変驚きました。最初は天然芝と勘違いしていましたが、砂の校庭しか知らない身としてはどのような校庭なのか想像がつきませんでした。

 筆者はあるときまで、地方と都会の運動会の「差」は校庭くらいだと思っていました。しかし、筆者と同じように地方で子ども時代を過ごした同級生たちの話を聞くと、そうではないことがわかったのです。それでは具体的に説明していきましょう。

呆然と立ち尽くした地方出身者

1.露店が並ばない
 北関東出身の筆者の同級生・Aさんは、大学進学を機に上京。就職と結婚をして、現在に至っています。そんな彼女は、小学校に入学した息子の運動会を楽しみにしていました。その理由は、彼女自身の小学生時代の思い出にあります。

露店のイメージ(画像:写真AC)

 子どものころのAさんは運動会当日、校庭側に何軒もの露店が並び、昼食時に水あめやかき氷を買いに行くのを楽しみにしていたからです。東京でもこの風習が当然あると信じていたAさんは童心に帰って、息子と一緒にお店巡りをするのを心待ちにしていました。しかし運動会当日、小学校に行ってみると露店の姿は一切なく、Aさんは呆然と立ち尽くしたといいます。

「東京は、なんでお店が並ばないの?」と呟くと、Aさんの横にいた旦那さん(首都圏出身)が「お祭りじゃないんだから、並ぶわけないよ」と驚いた様子で返答してきたそうです。Aさんがこの日のためにと用意していた小銭たちの出番はないまま、運動会は終わりました。

「トラブルの元」はすぐはじかれる世の中

2.昼食は親子別々で、校庭の場所取りも禁止
 地方の小学校の運動会では、保護者が熾烈な場所取りを繰り広げます。人気の高い「日陰」のエリアは、敷物ですぐに埋め尽くされるほど。ゆっくりと昼食を食べたり過ごせたりするため、孫の運動会を見に来た祖父母を接待するママにとって、絶対に負けられない戦いとなっています。

場所取りのイメージ(画像:写真AC)



 そのような大変さを地元に残った友人から聞いていたBさんは、東京で迎える我が子の運動会に戦々恐々としていました。Bさんはそんなある日、マンションのエントランスで子ども同士が同じクラスのママ、Sさんに会いました。Sさんは、以前から小学校の疑問などをBさんと相談し合う仲でした。

「運動会の場所取りや昼食の準備、かなり大変ですか?」と何気なく聞いてみると、Sさんから予想もしない返事が返ってきました。子どもは3年ほど前から、教室でお弁当を食べるようになり、親は自宅で昼食を食べたり、学校近くのファミレスで済ませたりする人もいる、というのです。「校庭の場所取りも、トラブルの元だから同じ時期から敷物禁止になったのよ」とのこと。

 Bさんの心配は杞憂に終わったものの、親子で昼食を食べられないことに一抹の寂しさを覚えました。結局、場所取り問題は解決しましたが、運動会を見に来る義理の両親と子ども抜きでご飯を食べることに、頭を悩ませることとなったのでした。

3.地元の盆踊りを踊らない
 筆者が小学生の頃、運動会では全学年の子どもとPTAの父兄が一緒になって、地元の盆踊りを踊りました。昼食前の最後の種目として、会の最後のリレーと並ぶほどの特別扱いです。一部の人しか分からないであろう、女性歌手が唄う地域の名所をふんだんに取り入れたその盆踊りは、近隣の小学校でも運動会の定番となっていました。

それぞれの良さがある、地方と東京の運動会

 盆踊りが運動会の種目のひとつになっている地方の現象は、東京では見られない――そうと聞いたのは2年前のことです。23区で子育てをしている友人Eからでした。

盆踊りのイメージ(画像:写真AC)



 Eによると、そもそも、東京では地域特有の盆踊りがないとのこと。東京というと、東京音頭が頭に浮かびますが、それを運動会で踊る小学校を見たり聞いたりしたことがないと話してくれました。「もしかしたら2020年の東京オリンピックに向けて、東京五輪音頭を運動会で披露する学校があるかもしれないね」と笑っていました。

 Eは小学生当時、「こんな時代錯誤なことをして意味があるの?」と感じていましたが、東京での運動会を経験し、地元の運動会をもう一度見たいという気持ちが強まってきたそうです。

 運動会は親にとっても、子どもの成長を感じられる楽しみな行事です。しかし、その雰囲気は地域によって大きく異なります。地方出身のママは、東京の運動会に驚くことの方が多いかもしれません。

 しかしどちらかが優れていると考えるのではなく、「東京ではこういった運動会をするんだ」と受け止め、地元の親や友人との雑談ネタにするのも面白いのではないでしょうか。

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