まちの風景がゆっくり味わえる――多摩エリアのおすすめバス路線3選

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まちの風景がゆっくり味わえる――多摩エリアのおすすめバス路線3選

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鳴海侑

まち探訪家

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多摩地区のまちを結び、縁の下の力持ちとして活躍するバス。そんなバスの魅力について、まち探訪家の鳴海侑さんが紹介します。

吉祥寺はバスでも広いエリアから人を集める

「東京の話」というと、おおむね23区の話になりがちです。しかしながら、東京都には23区以外に多摩があります。23区の人口約930万人に対して、多摩地域の人口は約420万人と半数以下ですが、住宅環境は良質で面白いまちがたくさんあります。

 その多摩地区のまちを結び、縁の下の力持ちとして活躍しているのがバスです。今回は多摩のバスの話をします。

吉祥寺駅付近のバスの様子(画像:写真AC)



 多摩の東端にあり、住みたいまちとして上位にくる吉祥寺。駅前にはさまざまな場所に向かうバスが発着します。南へは小田急バスや京王バスが走り、三鷹市内の各地を結ぶほか、千歳烏山、仙川、調布と京王線の主要駅も結ぶことで、面的にネットワークを形成します。

 北は西武バスや関東バスが上石神井、田無、花小金井といった西武新宿線の駅までだけではなく、石神井公園、大泉学園、保谷といった西武池袋線の駅、そして東武東上線の成増駅近くや、果ては都県境を越え、埼玉県新座市の南端まで足を伸ばします。

 そしてどのバスも本数が多く、多くの人はバスに乗って吉祥寺駅にやってきます。駅前のバスの降車場所にいると、バスがひっきりなしにやってきては、たくさんの乗客を下ろしていきます。そしてバスの乗り場へ回送し、またたくさんの乗客を乗せて去っていきます。

 このように、吉祥寺は中央線や井の頭線沿線だけではなく、バスでも広いエリアから人を集めているのです。もちろん、鉄道の方が多くの人を運んでいることでしょう。しかし、この充実したバスネットワークが吉祥寺の発展を支えている面もあります。

バスは「ゆっくりとまちの風景を見せてくれる」

 今回は吉祥寺を例として挙げましたが、バスネットワークが重要な役割を果たしているまちは、吉祥寺だけではありません。立川や八王子、町田といった多摩の中でも大きなまちの駅前にはひっきりなしにバスが発着しており、行き先もさまざまです。

 その理由として多摩地区の鉄道ネットワークの弱さが挙げられます。南北に移動する鉄道はほとんどなく、経路検索アプリで検索すると、よく多摩の南北を移動するのに新宿を経由するのが早いという結果が出てきます。一方で、なんだか無駄に遠回りしている気持ちは拭えません。そこで活躍するのが多摩の南北を結ぶ路線バスです。調べてみるとさまざまな系統が出てきます。

バスの車掌から景色を眺めるイメージ(画像:写真AC)



 そしてバスのいいところはゆっくりとまちの風景を見せてくれることです。鉄道は速いですが、まちを味気なく通過してしまいます。一方で、バスは住宅地だけでなく大きな公園、賑わっている商店街などさまざまなまちの姿を見せてくれるのです。

 急いでいるときはもちろん、鉄道で新宿を経由するのもいいでしょう。しかし、時間があるときはバスで移動してみると、人々の移動や暮らしが見えてきて、いつもと違う、楽しい移動となると思います。

おすすめのバス路線 3選

 中でも鉄道駅を結び、おすすめのバス路線を3つほど紹介しましょう。

八60系統のルート(画像:(C)NAVITIME JAPAN、(C)ゼンリン)

1.八60系統(京王バス、八王子駅~北野駅~南大沢駅)
 同じ八王子市内同士にもかかわらず、峠を越える路線です。峠へ向かう道にも、峠の上にも住宅地がありますが、段々と多摩ニュータウンへ近づいていくにしたがって変わっていく住宅地の雰囲気を感じられる路線です。

2.境04系統(西武バス、武蔵境駅~田無駅~ひばりヶ丘駅)
 多摩の住宅地を南北に走り抜けていきます。沿線には閑静な住宅地、農地、高度経済成長期に作られた団地などがあり、多摩の住宅地がどうやって発展してきたのかを感じることができます。また、団地の意外な立地にも気づくかもしれません。

3.吉53系統(関東バス、吉祥寺駅~西武柳沢駅)
 吉祥寺は人気のまちですが、実際はどこまでが吉祥寺なのでしょうか。その答えはこの系統に乗ればわかるかもしれません。吉祥寺駅から乗った客はどのあたりまで乗っているのか、周辺のマンションはどんな名前なのか、どんな施設が沿線にあるのか・・・・・・興味がつきない路線です。また、この路線は幻の鉄道路線計画を途中の武蔵野中央公園までなぞっています。それも調べてみても面白いでしょう。

知らなかった東京の一面が見えてくる

 他にも多摩地区はコミュニティバスの宝庫でもあります。全国のコミュニティバスブームの先駆けとなったのは武蔵野市の「ムーバス」ですし、多摩地区30市町村のうち24市村で運行されています。

街なかを走るコミュニティバスブーム「ムーバス」(画像:武蔵野市)



 なかでも武蔵野市、三鷹市、西東京市、府中市、小金井市、日野市では年間のべ100万~200万人がコミュニティバスを利用しています。こうしたコミュニティバスも多摩の様子を垣間見るにはとてもいい交通機関です。

 小型バスやワゴン車で住宅地の中をすり抜けていく路線に乗っていると、住宅や公園やスーパーをより間近に感じることができます。気になるまちや住んでみたいまちも見つかるかもしれません。

 多摩地区を縦横無尽に走る縁の下の力持ち、「バス」。ぜひ、時間があるときや小旅行の行き先として乗ってみてください。いままで知らなかった東京の一面が、きっと見えてくるはずです。

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