赤羽に飽きたら、次は「十条」? 商店街の惣菜は激安・激ウマ 1個10円のチキンボールに酔え

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赤羽に飽きたら、次は「十条」? 商店街の惣菜は激安・激ウマ 1個10円のチキンボールに酔え

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昼間たかし

ルポライター、著作家

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テレビドラマ「山田孝之の東京都北区赤羽」や乗り入れ路線や商店街の利便性、安い居酒屋などで一躍人気の場所になった北区赤羽。現在ではそんな赤羽を後にして、十条に流れる人が増えていると言います。ルポライターで著作家の昼間たかしさんが解説します。

赤羽からの「避難民」が集まる街

 朝から営業している居酒屋や味のある飲み屋などがさまざまなメディアで取り上げられて、北区の赤羽は今や多くの人が足を運ぶ観光地となりました。

 かつては地元民しかいなかった街は、一見さんだらけです。どこの店も観光客がいっぱいで、地元民の姿は減ってしまいました。そんな彼らは、いったいどこに「避難」しているのでしょうか。少し尋ねてみると、こんな話が聞けました。

「最近は、もっぱら十条だね」

十条駅の外観(画像:写真AC)



 十条は赤羽より駅でひとつ池袋寄りの場所に位置しています。同エリアの中心的な商店街は埼京線の西側、駅前ロータリーから広がる十条銀座商店街です。北区最大のアーケードという「微妙な最大感」を誇る商店街は、東・西・中央の3つのメインストリートと約200軒の店舗から成っています。

 さらに周辺に存在する十条仲通り商店街、富士見銀座商店街、十条中央商店街を加えると店舗数は500軒くらいになります。埼京線オンリーの停車駅しかないため、十条は決してターミナル的な場所ではありません。そのようなことからも、商店街の活気は十条の地域住民よって成立していることがわかります。

激安商店街 女子大学生も行列に並ぶ

 全国的に商店街は時代遅れといわれながら、東京23区には活気のある商店街がいくつも存在します。

 その中で多くを占めるのが、大田区の雑色や武蔵新田などのような、大型スーパーを中心とした回遊ルートが成立している商店街です。その一方、アメ横や浅草の仲見世通りのように完全に観光地化し、地元民より来訪者が大半を占める商店街もあります。

 しかし、十条銀座はそのどちらとも違います。大型スーパーは商店街から外れた場所にしかありません。商店街の中にはコンビニすらないのです。

十条銀座の入口の様子(画像:写真AC)



 そんな独特な雰囲気の十条銀座で、安さを売り物にして人々を引き寄せている店舗の多くが個人商店です。十条銀座の中でも数が多く、存在感を放つ総菜店は「安さ爆発」どころではありません。

 なにしろアーケードのあちこちに、「焼き鳥50円」の値札を見ることができるのです。都内の下町は持ち帰りできる焼き鳥をけっこう見かけますが、50円というのは、そうそうありません。

 コロッケにいたっては、もっと安くて30円という値札も当たり前。初めて訪れた人はビックリするでしょう。夕方になると、そんな激安総菜店に長蛇の列ができるのが十条の日常です。近所の人とおぼしきオジサンやオバサンに混じって、若い女子たちの姿も。

 聞けば近隣の大学生にとって、下校時間の「買い食いスポット」になっているというではありませんか。その行列の先を見れば「つくね20円」。十条銀座の名物として知名度を挙げているチキンボールに至っては、「10円」の値札がついています。このチキンボール、小学生はおやつ代わりに「ひとつください」といってるし、親子連れは「30個ください」という具合です。一度食べてみればわかりますが、「このチキンボールのためだけに、十条近辺に住んでもよいかも」と思える隠れた絶品グルメなので、十条観光のときには欠かせません。

 また、別の店では「おにぎり100円~」という値札も。こんな店ばかりが軒を連ねているのですから、コンビニまったく出店することができないのも納得です。

昭和テイストを放ちつつも、店舗が流動的

 十条銀座で安さを誇るのは、総菜だけではありません。開店から閉店まで、いつも賑わっている店舗は無数に存在します。とりわけ衣料品店は23区でほかに見られない激安感で衝撃です。

にぎわう十条銀座の様子(画像:写真AC)



 店内の服はもちろん、靴が209円や299円、309円と、どのようにして採算を取っているのか理解不能な値段です。十条では生活費が月に5万円もあれば、超リッチな暮らしをおくることができそうです。

 そんな十条銀座のもうひとつの特徴は、昭和テイストを放ちつつも、店舗が固定化していないことです。家賃が安いのか、若者ウケしそうな店舗も次々と出店しています。タピオカドリンクのお店も最近できました。この流動性こそが、十条銀座に活気をもたらしているのです。

 東京でも残り少ない、典型的な下町・十条。しかし、この街も再開発とは無縁ではありません。現在、十条駅は高架駅への改築に向けて準備が進んでいます。これに併せて駅前広場に面した土地に、巨大なビルを建てる案が浮上しています。

 確かに池袋駅まで約10分の街ならば、再開発したほうがより利便性が増すのかもしれません。しかし、そうなったとき、この独特の店舗群は再開発後も生き残れるのでしょうか。街の特徴を失っては、元も子もないはず。ほかの地域の失敗例も見習い、再開発計画を考えて欲しいと願うばかりです。

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