紅茶ブランドを立ち上げた日印ハーフの男性が、父と母から学んだ「チャイ」のチカラとは?

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紅茶ブランドを立ち上げた日印ハーフの男性が、父と母から学んだ「チャイ」のチカラとは?

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インド人の父と日本人の母をもつ、大久保 カプール 玲夫奈さんは、チャイに特化した紅茶ブランド「モクシャ チャイ(Moksha Chai)」を展開しています。チャイにこだわる理由と、インド的チャイの楽しみ方について、話を聞きました。

チャイは見知らぬ人との会話をつなげる

 インドの旅でしばしば出会うチャイ(スパイス入りのミルクティー)を、日本で作って飲みたい――。記者がそう思い紅茶葉を探しているとき、チャイに特化した紅茶ブランド「モクシャ チャイ(Moksha Chai)」があることを知りました。製造・販売を行うのは、インド人の父と日本人の母をもつ、大久保 カプール 玲夫奈(れおな)さんです。

大久保 カプール 玲夫奈さん(右)とインド人のお父さん(画像:モクシャチャイ)



 大久保さんはこの事業をまだ立ち上げたばかり。なぜ商材を日本でさほど普及していない「チャイ」に特化したのかを聞くと、次のような答えが返ってきました。

「私の父は、母に毎朝チャイを作るのが日課です。その日の気分でスパイスの量や種類を変えるので、その味わいについてふたりで話ながら朝のひとときを楽しんでいます。夫婦喧嘩した翌朝にも、父は母のためにチャイを作ります。さすがに最初はふたりとも無言ですが(笑)、紅茶を飲んでいるうちに気持ちが自然とほぐれて仲直りするんです。

 インドの人たちは1日に何度もティーブレイクをして、見知らぬ人や仲間との会話や生活を楽しみます。私はチャイを通じて、せわしなく働く日本の人々に癒しやゆとりのあるライフスタイルを提案したかったので、この事業を立ち上げました」

 大久保さんがそう考えるようになったのは、大学卒業後に新卒で入った会社でイタリアに赴任したときの経験も関係していると話します。イタリアに6年間暮らし、日本人とイタリア人のライフスタイルの違いを「働き方」にもっとも感じたそうです。日本人は働くことが一番で、余暇は二の次。イタリア人はその逆で、バケーションのために仕事をする。イタリア人が8月に1か月丸々休暇をとるのは広く知られています。

「絶対王政だったヨーロッパにとって民主主義は『勝ち取った自由』であり、休みも『勝ち取った権利』であるため、それを大切にする意識が強く、休暇や休憩を必ず取るんです」(大久保さん)

 かといって、長く根付いた日本の文化を一朝一夕に変えることは難しいので、せめて「ゆっくりお茶を飲む時間」を生活に取り入れることから提案したいと話します。

スパイスで「癒し」を生むのが紅茶

 人懐っこく話好きが多いインドの人たちにとって、チャイはコミュニケーションツールとして生活に欠かせないものと大久保さんはいいます。「チャイワーラー」と呼ばれる紅茶(チャイ)売りが人の集まるところに必ずいて、また価格が極めて安いことも生活に浸透している理由のひとつです。安いので見知らぬ人にご馳走し、そこから会話が生まれます。

チャイによく使われるスパイス(画像:モクシャチャイ)



 記者がチャイの魅力にハマったのは、インドで早朝に飲んだ「マッサーラ・チャイ」が、おいしい上にスパイスが効いていて一気に目が覚めたから。インド式のように砂糖をたっぷり入れなくても、十分においしいのです。茶葉を水から煮出してミルクを加え、複数のスパイス(カルダモン、ドライシナモン、ジンジャー)を混ぜるレシピを聞いて、日本でも作るようになりました。

 チャイは「淹れる」というより、好みの味わいに「作り上げる」もの。大久保さんのお父さんは、ドライジンジャー、カルダモン、ブラックペッパー、クローブ、シナモンをその日の気分で使い分けてチャイを作るそうです。

 インドでは、スパイスを入れて作る紅茶はチャイ以外にもさまざまあり、「家庭の味」が存在します。そこがコーヒーや日本茶と違う点といえます。また、日本人はスパイスと聞くと「辛いもの」というイメージがありますが、インドでは「香り」も大きな要素。香り高いスパイスを紅茶に使用することで、癒し効果にも波及するのです。

「ドライシナモンを例にあげると、日本で流通しているものは、インドで売られているものの3分の1程度しか香りが抽出されないと感じます。インドのシナモンスティックは、ひどく欠けて見た目はよくないのですが(笑)、とても香りが立つんです。スパイスも茶葉もインドから取り寄せ、香りにもこだわったチャイを日本で普及させたいと思っています」(大久保さん)

 現在、販売している茶葉のサンプルを見せてもらうと、とてもいい香り。その茶葉で作ったチャイを飲ませてもらうと、インドで飲んだ時の記憶が蘇ってきました。

「チャイのおいしさを引き出すのは、きび砂糖か三温糖です。グラニュー糖はあまりおすすめしません」(大久保さん)

9月から中目黒でチャイ専門店を週1回営業

 大久保さんが販売する商品は、CTC製法(加工法)で作られたアッサム産の紅茶葉にスパイスを混ぜているので、ミルクを加えるだけでチャイが完成します。CTCとは、「Crush(つぶす)、Tear(裂く)、 Curl(丸める)」の略。茶葉が丸い形をして、紅茶の成分が抽出しやすいように加工されているので、ミルクティー向きといえます。試作をさまざまな人に飲んでもらった結果、スパイスの量を「日本人向け」に調節したそうです。

生姜、シナモン、カルダモン、クローブなどの様々なスパイスを無添加100%インド産のクラフトリーフティーにブレンドしているモクシャチャイの茶葉(画像:モクシャチャイ)



 モクシャチャイは、2019年9月12日(木)から中目黒で週1回、チャイ専門店「カフェ モクシャチャイ 中目黒」をオープンします。チャイはもちろんのこと、ハーブティーやストレートのダージリンなど、インド産に特化した紅茶を提供するとのこと。チャイデザートや、スコーンなど紅茶に合うスイーツも揃える予定です。

 チャイを通じて得られるゆとり、癒し、そして会話のある暮らし。それらを取り入れれば、大久保さんのご両親のように仲直りのきっかけになったり、イライラが鎮まったり、ライフスタイルの前向きな変化につながったりするかもしれません。

●カフェ モクシャチャイ 中目黒
・住所: 東京都目黒区東山1-3-6 クレール東山 2F(アロマカフェを間借り)
・営業日:2019年9月12日(木)より毎週木曜(週1回)
・営業時間:10:30〜17:00
・アクセス:各線「中目黒駅」から徒歩約7分

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