花粉症ゼロ・無電柱化――小池都知事の卓抜した「ネーミングセンス」が東京を変えた 良くも悪くも

2016年東京都知事選挙で当選した小池百合子都知事。「無電柱化」「花粉症ゼロ」などキャッチーな言葉を使って、自身の公約を打ち出したことでも知られます。そんな小池知事の持つ「ネーミングセンス」とその実際について、フリーランスライターの小川裕夫さんが解説します。


「花粉症ゼロ」は、林業政策の失敗が出発点

「花粉症ゼロ」も同様です。

スギから花粉が飛ぶイメージ(画像:写真AC)

 例年2月頃から飛び始めるスギ花粉による花粉症は、都民のみならず多くの国民が罹患します。花粉症はもはや、国民病といっても過言ではないレベルです。

 花粉症を引き起こすスギは、昭和20年~30年にかけて全国各地で盛んに植林されました。これは、戦災復興で住宅用建材が大量に不足していたからです。しかし、スギが住宅用建材として使用できるまで成長するには約30年の歳月がかかります。

 その間、日本政府は外材を輸入することで木材を調達しました。安価に輸入された外材は、林業従事者を圧迫。昭和30年代まで活況を呈していた林業は、昭和40年代から衰退を始めます。

 林業が衰退していく現象は、東京都で顕著に現れています。

 東京都は人口が多いゆえに、戦災復興でも大量の住宅用建材が必要でした。それらを賄うため、多摩山林に大量のスギが植林されています。

 多摩山林のスギは、植林から50年以上が経過。従来なら住宅用建材に適した大さに生育しており、伐採されているはずです。しかし、外材に押されて国産材の需要は低く、また林業従者の高齢化や減少もあって多摩山林は伐採されないまま放置されました。こうして、多摩山林のスギは単に都民を苦しめる存在になったのです。

進む無花粉スギへの植え替え

 究極的なことをいえば、スギをすべて伐採すれば花粉症は一気に解決します。しかし、そう簡単に伐採することはできない事情があります。

 山林の木を伐採すると土砂崩れを引き起こす原因になり、その被害は甚大です。また、多摩山林には水源涵養(雨水を地面に吸収して水源を保ちながら、川の水量を調節すること)という役割もあります。そのため、むやみにスギを伐採するわけにもいきません。間伐・伐採は計画的に進めなければならないのです。

 農林水産省や林野庁は研究を重ねて、花粉が飛散しない無花粉スギの開発に成功しました。現在、多摩山林のみならず全国各地で無花粉スギへの植え替えが進められています。花粉症に悩まされる人たちにとって朗報ではありますが、これも一気に進めるわけにはいきません。少しずつ植え替えていくしかないのです。

 小池都知事の「花粉症ゼロ」は、林業政策の失敗が出発点です。しかし、これも小池都知事のオリジナル政策ではありません。

理論上、「花粉症ゼロ」は不可能


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