被災地支援や脳ドックもできる! お得なだけじゃない「ふるさと納税」制度を知る

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被災地支援や脳ドックもできる! お得なだけじゃない「ふるさと納税」制度を知る

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先日、法改正が行われた「ふるさと納税」制度。その背景には、過剰ともいえる「返礼品競争」がありました。「返礼品」に「お得」という印象を抱く人は少なくないでしょう。ですが同制度は、単に「返礼品がもらえる」だけの制度ではありません。

法改正で4市町が除外、今後は?

 近年、ぐっと身近な存在となった「ふるさと納税」制度。利用したことのある人も多いのではないでしょうか。「美味しい肉や魚が手に入る」「税金が控除される」との認識を持つ人も少なくないかもしれません。

さまざまな返礼が送られてくる「ふるさと納税」(画像:写真AC)



 ですが元々、同制度は「自分を育んでくれた『ふるさと』に、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのではないか」との問題提起から始まったもの。なお、「納税」という言葉がついていますが、実際は、都道府県や市区町村への「寄附」です。

 創設後しばらくは、認知度が低かった同制度ですが、2011(平成23)年に発生した東日本大震災により、その存在が知られ始めます。「被災地へ支援金を届ける方法」として注目が集まったのです。

 近年では、地域の特産品を「返礼品」として送付する自治体が増加し、民間企業によるポータルサイトも出現。より気軽に寄附が可能となり、制度への認知が高まるなか、地域性とは関係ない、金券などの返礼品を寄附を募る自治体も登場しました。

 次第に激化する返礼品競争。総務省は度々警告を発してきましたが、2019年6月、ついに法改正が行われることとなりました。

 新制度では、返礼品は「調達額が寄附金の3割以下の地場産品」に限定することが「義務化」されています。さらに「適切でない方法で多額の寄附を集めた」として、4市町(大阪府泉佐野市、静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町)が除外されました。

 この4市町は2019年8月2日(金)、総務省が発表した「ふるさと納税に関する現状調査結果」によると、「2018年度 受入額が多い自治体ランキング」1位から4位を占めています。4市町の受け入れ額の合計は約1113億円。全国の受け入れ額の総額は約5127億円なので、全体の約2割をも占めていたことになります。

 今後、ふるさと納税はどう変わるのでしょうか。新制度により、対応を迫られる自治体もあるでしょう。しかし、その一方で、もともと「調達額が寄附金の3割以下の地場産品」という規定を守りながら、制度の活用に努めてきた自治体の取り組みは、以前に比べ、見えやすくなる可能性があるのではないでしょうか。

災害発生時、いち早く被災地支援できる仕組みがある

 ところで「ふるさと納税の返礼品」と聞いたとき、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。実は返礼品は、非常に多岐に渡るもの。地場産業から生まれた製品、何らかの体験ができるものなど、実にさまざまです。

天災が発生した際、いち早く被災地へ支援を届ける仕組みもある(画像:写真AC)



 また、ふるさと納税は必ずしも、返礼品ありきではありません。「東日本大震災発生時、支援金を届ける方法として注目が集まった」と先述しましたが、現在でも、天災が発生した際に、いち早く被災地へ支援を届ける仕組みが存在します。

 トラストバンク(目黒区青葉台)が運営する、大手ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」内には、「ふるさとチョイス災害支援」があります。これは、天災などが発生した際、ふるさと納税を活用して、被災した自治体の復旧や復興のために寄附金を募る仕組み。自治体が手数料を払う必要はありません。

「災害発生後、被災地の自治体との間で『寄附申込みフォーム』の開設意向が確認できれば、すぐに寄附の受付が始まります。たとえば、2019年6月18日(火)の夜22時ごろ発生した新潟・山形地震の場合、翌日6月19日(水)から寄附の受付を開始しています」(トラストバンクの担当者)

「代理寄附」という仕組みもあるとのこと。これは、有事の際、被災自治体に変わり、別の自治体が「代理」で寄附を募るものです。

「被災した自治体は、住民の安否確認や避難所の準備など、さまざな緊急業務を行う必要があります。そのような状況下のなか、被災していない自治体が被災自治体の代わりに寄附を受け付け、寄附金受領証明書などの発送や受付事務作業を請け負うことが可能です。実際に、新潟・山形地震の際にも、『鳥取県』が『山形県』の寄附を受け付けています」(トラストバンクの担当者)

 災害支援の寄附では、基本的に返礼品はありません。被災地の人らの身を案じ、少しでも何かをしたいと思ったとき、その思いを届けるための「寄附」なのです。

活オオグソムシ、昆布のブーケ、子牛の命名権… 衝撃的な返礼品も

 返礼品に関しても、「ええっ! こんな物もあるのか!」と思わず驚いてしまうようなものが、全国津々浦々、数多くあります。

 たとえば令和への改元時、話題に上った「平成の空気缶詰」(現在は在庫なし)も、岐阜県 関市の返礼品だったことがありました。「平成の空気缶詰」は、平成元号と同じ漢字表記である「平成(へなり)地区」の「元号橋」付近で採取した「空気」のほか、「五円玉」が詰め込まれた缶詰です。

いっとき、ふるさと納税の返礼品にもなっていた「平成の空気缶詰」(画像:ヘソプロダクション)



 ほかにも一例として、下記のような返礼品が挙げられます。

●昆布の花束 浦河喜コンブーケ(北海道 浦河町)

 鮮魚店と生花店が共同開発した「日高昆布のブーケ」。花束のようにラッピングされた昆布が、花専用の箱に入って届きます。分解すれば、出汁や料理に使用できるとのこと。

●「深海王国」室戸からお届けする「活オオグソクムシ」(高知県 室戸市)

 深海300mから収穫してきた「オオグソクムシ」が生きたまま届きます。味は、エビやカニの味に近いのだとか。

●子牛の命名権(宮崎県 小林市)

 1頭の子牛への命名権のほか、命名した子牛の写真や登録証証明書がもらえます。

●ふるさとで脳ドック(神奈川県 三浦市)

 三浦市立病院にて、頭部MRI、MRA、頚動脈エコーのほか、血圧脈波検査や、肝、膵機能検査などが受けられます。

●思いやり返礼品 伊勢神宮等 代行参拝(三重県 玉城町)

 体力などの理由から、伊勢神宮への参拝が叶わない人の代わりに「代行参拝」を行なってくれるとのこと。参拝ののち、ご朱印と参拝の様子を撮影した写真が送付されます。

●上毛電鉄の特別な電車「デハ101」の貸切り(群馬県 前橋市)

 群馬県前橋市と桐生市を結ぶ「上電」こと、上毛電気鉄道を1往復「貸切」で臨時運行できる権利です。結婚式に使用するのもOKとのこと。

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 さらに、「お墓参りの代行」「空き家の見守り」「1日体験ダイビング」「田植え体験」「1年間、ご当地ヒーローになれる権利」などを、返礼品として用意する自治体も。そこには、ふるさと納税をとおして、寄附者と地域との繋がりを強めようと奔走する、関係者の創意工夫が垣間見えます。

 このように同制度は、特定の地域に居住しながらも、さまざまな地域と繋がりを持てる方法のひとつであり、ひいては、新たな交流のきっかけにもなり得る制度なのです。それは、旅先でさまざまな経験をすることで、その土地に愛着を覚えることにも似ているように思います。

「お得」と思われることも少なくない同制度。ですが、さまざまな側面から見つめてみることで、より豊かな経験ができるかもしれません。

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