自治体の広報紙は「お宝情報の山」 激安料理教室から錬金術の伝授まで、若者こそ読むべき?

  • ライフ
自治体の広報紙は「お宝情報の山」 激安料理教室から錬金術の伝授まで、若者こそ読むべき?

\ この記事を書いた人 /

おのみさのプロフィール画像

おのみさ

エッセイスト、イラストレーター

ライターページへ

東京の下町に住んでいる、エッセイストでイラストレーターのおのみささん。そんなおのさんが区の広報紙の意外な魅力について、ゆる~く語ります。

申し込みはなぜか往復ハガキというアナログさ

 私が住んでいる東京の東のはじっこにある下町では月に2~3回、区の広報紙が送られてきます。ある日、それをぼんやり眺めていると「ゴーヤの苗を無料配布&育て方も教えます」という素敵な情報が目に入りました。

広報紙のイメージ(画像:写真AC)



 以前から、ゴーヤなどのつる性植物をネットに這わせた「グリーンカーテン」に憧れていたものの、一度失敗しているので(スズメに苗を荒らされました)、「これはいい」と早速申し込んでみました。

 講習を聞いているとなるほど、ただテキトーに植えるだけではなく、鉢の大きさや摘心(てきしん。新しく伸びてくる葉などを摘み取ること)すること、水や肥料はたっぷりあげることなど、色々な育て方ポイントがあることがわかったうえ、区の職員さんがゴーヤの苗をふたつもくれたのです。

 このおいしい経験を機に、広報紙が来るたびに隅々までチェックしていると、区民大学、区民農園、手作り体験、料理教室、スポーツ教室、落語や映画鑑賞に加え、親子体験イベントやシニア向け交流会など、面白そうな行事が色々あるのがわかりました。興味があるものを往復ハガキ(なぜかメールではない)で申し込み、参加してみることに。

錬金術を身につけた私。「ありがとう、区!」

 区民大学では、区内にある大学の教室で、大学の先生がスライドを使って講義をしてくれます。私はお酒や発酵食品が好きなのでお酒の醸造の講義や、ほかにも食育や健康体操など、興味があるテーマの講義をうけてみました。本を読むよりもわかりやすくて頭にはいるし、資料までもらえて無料だというのだからありがたい。久しぶり(過ぎる)の大学生気分も味わえて、気持ち(だけ)も若返ります♪

母から譲り受けた、パウスカートとトウシューズ。オバチャンになっても、こういうものを身に付けるのはウキウキするのです(画像:おのみさ)



 スポーツ教室は3か月単位で申し込めて(計13回くらい)、一般の教室よりも安価なので「興味はあるけど、続くかどうかわからないし……」という場合にぴったり! 私はものすごく運動音痴なので、楽しく身体を動かしたいと思ってフラダンスを習いました。

 50歳だというのに、もらいもののパウスカートを恥ずかしげもなく履いて、腰をふりふり踊るのです。振り付けなど全然覚えられないし、身体も硬くて踊れてないのに、とても楽しかった! ベテランのおばさまが「楽しい? これからもっともっと楽しくなるわよ」とおっしゃっていたので、今はちょっと休んでいますが、また復活しようともくろんでおります。

 料理教室も有料ですが、ほぼ材料費だけなんじゃないかというほど激安。グループ単位で作るのですが、中には先生の説明を聞いた直後に「これ、どうするんだっけ?」と質問してくる人や、料理以外のこと(洗い物など)をまったくしない人や、指を切りそうな包丁の持ち方をしているのに、料理自慢(得意料理はカレー)をするおじさまなど、個性豊かな人たちがいますが、短い時間なのでそれも笑い話。安くて楽しくておいしいので問題なし!

 ゴーヤを育ててからは園芸にも興味がわき「生ゴミ堆肥づくり教室」にも参加してみました。発泡スチロールの箱の中で、生ゴミを、土にいる土着菌で分解して堆肥にするのです。菌好きの私には興味津々の内容だったのですが、実際にやってみると、なぜか私の堆肥は匂いが臭い。ちゃんと菌が分解していたら臭くないハズなのに。

 しかも数日後、土を混ぜていると、中から虫の幼虫が数匹、ゴロゴロと出てくるではないか! 私は虫が苦手なので、発泡スチロールの箱ごと捨ててしまいたい衝動にかられましたが、いやいや、確か教室でもらった資料に虫対策も載っていたはず。

 まずは落ち着いて資料を読み直し、菌の養分になる米ぬかと、米ぬかで発酵させた生ごみを入れて上から土をかぶせ、そのまま蓋をしてガムテープでとめ、半年ほど放置してみました。

 半年後、恐る恐る蓋を開けてみると、土の表面には発酵菌がびっしり繁盛していて、混ぜてももう虫も生ゴミもいません。匂いも縁の下の土のような、堆肥の匂い。菌がすべて分解してくれたのです。感動!

 今年もタダでもらってきたゴーヤの鉢に、この堆肥をたっぷり混ぜこんだせいか、去年よりもよく育っていて、じゃんじゃん実をつけています。そう、私は材料費のみの金額で、生ごみを堆肥に変えるという錬金術を身につけたのです! これからは何を植えても、植物がよく育つはず。ありがとう、菌! ありがとう、区!

やって欲しい教室のリクエストもできる

 最近はSNSで簡単にイベントやワークショップの告知ができることもあり、色んなイベントを楽しめます。でもたまには自分の町の行事や講習会などに参加してみるのもいいもんですよ。何より無料、もしくは有料でも材料費のみだったりするので、お得感いっぱい♪

習い事のあとのランチもお楽しみのひとつです♪(画像:おのみさ)



 そのせいか参加者の皆さんは「せっかくお金払ったんだから、モト取ってやる!」というギラギラした感じはなく、とてもおだやかで優しい。それにほとんどの人は自分よりも歳上の、人生の先輩方が多いので、自分が若者のような気分になれて嬉しい(50歳なのに)。

 区がやっていることなので、突っ込んだ内容のものやマニアックなものはない……とは思いますが、探せばおもしろい教室があるかもしれない。なんなら区に、やって欲しい教室のリクエスト(例えば「和ハーブ教室をやって欲しい」など)をしてもいいのです。

 私は在宅仕事なので時間の調整ができ、比較的参加しやすいのですが、平日の夕方や土日にやっているものも色々あります。講義や習い事以外にも、初夏には菖蒲まつり、夏には花火大会や盆踊り大会など、地味だけど、参加してみると楽しいイベントがちょこちょこあって、飽きることがありません。

 皆さんが住んでいる町にも色んな行事があるでしょうから、広報紙をチェックしてみてはいかがでしょうか? 「歳とってヒマになってからやるわよ」なんて思っていたらもったいない。せっかく税金払っているのだから、色んな知識を吸収して、楽しまなきゃ損ですよ。そこからまた、新しい世界が広がる可能性だってあるのです♪

関連記事