テーマは昭和の街、亀戸の「勝運商店街」が看板建築で再興を果たしたワケ

江東区の亀戸駅から歩いて数分の場所に、看板建築風の建物が立ち並ぶ商店街があります。いったいなぜこのようなデザインになっているのでしょうか。都市探検家・軍艦島伝道師の黒沢永紀さんが解説します。


細かなディテールで昭和初期の流行を踏襲

 商店街の看板建築を少し詳しくみてみましょう。まず、入口に店を構える和菓子の「山長」さんは、冒頭でもお伝えした通り、5階建のビルの2階部分を看板建築風に覆ったフェイク。

勝運商店街の入口に店を構える和菓子の「山長」。青海波が綺麗な銅板部分は実は塗装。唐破風や親子格子などを配して、看板建築というよりは折衷建築の印象が強い外観(画像:黒沢永紀)




 青海波(せいがいは)模様の目隠しは、綺麗な緑青(ろくしょう)色をしていますが、実際の銅板ではなく塗装だとか。ただし、ビル上部の正面にも手を加えて丸みを帯びたベランダにするなど、昭和初期の雰囲気が良く出ています。

 商店街に入って右側3軒目の「勝運ひろば」の建屋は、山長さんと似たような緑青色ですが、こちらはれっきとした銅板。ただし、人工的に緑青を吹かせているので、まるで塗装のように見えます。

 本来、銅板の緑青は、20年以上外気に晒されてやっとでき上がる自然のアート。青緑色の濃淡がまだらに現れることが、老舗の証にもなりますが、長束さんのお話だと「自然の緑青は汚いので人工的な処理にした」とのこと。網代(あじろ)や青海波、そして麻の葉など、銅板葺看板建築の定番的な江戸小紋がふんだんに散りばめられ、小さなアーチを埋めるタイルも憎い演出です。

 山長さんの並びの「すみれ緑花店」と「カトリ美容室」は、モルタル仕上げの看板建築。いささか今風の色合いですが、上部のキーストーンや歯型の軒下飾りなど、細かなディテールが昭和初期の流行を踏襲しています。

 その隣は1870(明治3)年から営む味噌と漬物の「丸定」。こちらは、正統的な看板建築ではありませんが、建屋が鉄筋コンクリートのため、看板建築にするのが難しかったと長束さんは語ります。隣接する「蔬菜(そさい)フルーツ 坂本商店」は、洗い出しの人造石を使ったアール・デコが印象的な一棟。こだわりを感じる三連アーチや付け柱の装飾など、商店街の中で最も完成度の高い仕上がりといえるでしょう。

 商店街の入口から並ぶこれらの数軒が気合の入った看板建築で、あとは看板建築風のテイストを一部に取り入れて改装したものが数軒。残りは補助金による袖看板以外、看板建築の要素はみられない店舗が並びます。袖看板だけの店舗は、鉄筋ビルの1階に入店してるものが多く、「丸定」さんと同様に施工が難しかったのではないでしょうか。

「ネオ看板建築」を生み出す先駆けに


【写真】バリエーション豊かなデザイン! さまざまな看板建築が建ち並ぶ亀戸香取勝運商店街の中心部の様子

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