あなたは保育園を信頼できてる? すれ違う親と保育士の思い、その解決策とは

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あなたは保育園を信頼できてる? すれ違う親と保育士の思い、その解決策とは

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小さい子どもを持つ共働き世帯にとって、心強いのが保育園の存在です。しかしそこは対人間のビジネスです。園の対応に不満を持つ親御さんもいらっしゃることでしょう。そんな現状について、保育園で勤務経験があり、自身も子育て中の筆者が、保育士の実態とその努力について語ります。

お迎え要請の電話は、保育士も心苦しい

 春の保育園の入園時期から3か月が経ちました。保護者は「洗濯は2日に1回」「朝ごはんのメニューの固定」など、保育園生活に慣れ始めてきたことでしょう。一方、子どもの発熱で保育園から急な呼び出しなどが増えてくるのもこの時期です。保育園に対して、「少しの微熱なのになんで預かってくれないの?」と不満も抱きがちになる保護者は少なくありません。

 毎日子どもを預けてはいるものの、保護者は保育園について表面的なことしか知らず、内情についてほとんど知りません。保育園勤務経験者の筆者が、そのような保護者に知って欲しいことをまとめました。

入園で一変する生活スタイルにどう対応するか(画像:写真AC)



 一般的に保育園は子どもの体温が37.5度を超えた場合、預かることができません。登園時に37.5度以上であれば帰ってもらい、午前と午後の決まった時間や、「あれ? この子は少し体が熱いな」と思ったときに37.5度以上であれば、保護者にお迎えの連絡を入れます。

「お熱が高いのでお迎えに来てもらえませんか?」という連絡をするのは、保育士も非常に心苦しく、本来ならやりたくありません。仕事を中断しなければならない保護者の苦悩を理解しているからです。

 子どもが発熱して保育園を休んだり早退したりした場合、たいていの保護者は「仕事は休めないし、明日の朝に大丈夫なら預けよう」と思います。しかし、風邪がしっかり治っていない状態では、朝大丈夫でも午後になったら再び発熱し、「2日連続のお迎え連絡」といった結果になってしまいます。

 熱が一度出たらしっかり治すために、2~3日は自宅で様子を見てあげてほしいというのが保育士の本音です。「面倒だから預かりたくない」という気持ちからではありません。

 また保育士は看護師ではないため、「ちょっとくらいの熱なら保育園に置いていても大丈夫」という判断ができません。保育園のこういった対応が子どもを守る使命のもとに行われていることを、保護者に理解していただきたいです。

連絡帳は負担にならない程度でOK

 そうは言うものの、保育園は各家庭の負担を減らしたいと考えています。「保育園準備が意外と大変」と思っている人には、筆者は「サボれるところは、どんどんサボっていい」と伝えたいです。

連絡帳は必要以上に書き込まなくてもよい(画像:写真AC)



 たとえば、2歳児クラスまで設けられている連絡帳について。連絡帳の一番下には連絡事項を書く欄がありますが、体調面や事務的なことがなければ書かなくてもまったく問題ありません。

 ただ、しっかり書いてほしいのは食事や排便などの生活欄です。保育士が緊急で対応する際、参考になりますし、排便は回数や硬さなどがわかれば健康状態の確認になります。もし毎日の朝食メニューが固定なら、「昨日と同じ」「いつものと同じ」でOKです。連絡帳は、必要最低限の準備や連絡さえしてもらえれば、あとはわりと何でもいいのです。

 保育士が連絡帳を書くのは、子どもたちのお昼寝時間です。保育士にとって子どもたちのお昼寝時間は5分に1回呼吸チェックをしたり、工作を作ったり、ほかの事務作業を行ったりと、意外と忙しい時間帯です。

 連絡帳に子どもの様子が事細かに書かれていないとき、「保育士さんはちゃんと仕事をしていたの?」と不安に感じる保護者もいるでしょう。しかしそんな日はたいてい、すぐに起きてしまった子どもがいたり、ほかのやるべき業務があったりするのです。

 本来ならば、事細かく伝えるべきですが、日によってはそのような事情があることを少しでも理解してもらえると、保育士も仕事がしやすいでしょう。

 保育士は子どもの命を預かっているわけですから、保護者と密接にコミュニケーションを取って、信頼関係を構築したいと考えています。不安なことや希望など、すべてを叶えられるわけではありませんが、「まずは相談」という形で保育士に寄りかかってもらえたらと思っています。

クレームを言う前に、園の方針や考えに耳を傾けて

 しかしそういったコミュニケーションも、行き過ぎるとクレーマーのように受け取られる可能性があります。筆者自身の経験から、保護者からの困ったクレームをいくつかご紹介します。

クレーマ―になってはいけない(画像:写真AC)



 筆者の働いていた保育園は、お迎えが18時以降になると「延長保育」という扱いで、延長料金が発生していました。ある日、18時5分を過ぎた頃に園に駆け込んできた保護者が、「18時ピッタリですよね?」と筆者に迫ってきました。

 その人は「数分遅れただけで延長料を取るんですか?」「私の時計は18時です」と、「延長料は絶対に払いたくない」の一点張りで、感情も高ぶっていました。困った筆者は園長とともに、例外的に延長料を見逃してしまうと、保育園のルールすべてが形骸化し、安心して保育ができなくなる恐れがあることを説明したところ、その保護者は納得してくれました。

 また、「最近、お家で甘えんぼうになって困る。保育園がちゃんとしてないのでは?」「お家では忙しくて土日もトイレトレーニングができないので、保育園で完璧にやってください」と言われたことがあります。怒りにまかせて、あらゆることを保育園のせいにしたり、丸投げしたりする保護者には、さすがに対応に困ります。

 保育園の方針やルール、やり方がしっかり決まっている場合、多くの保護者は「融通が利かない」「殿様商売なの?」と不安を覚えるでしょう。しかし、保育園がそういった理由や考えについて、誠意ある説明をすれば、むしろ信頼感につながります。保育園の考えや思いを共有することで、保育園が保護者にとって、子育てにおける強力なパートナーとなれると筆者は考えています。

 保育園が「サービスを提供するお店」で、保護者が「サービスを受けるお客」といった、お金で成り立つ関係ではなく、双方互いに信頼することが、子どもの育つより良い環境を生むのです。

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