老若男女に大人気、フリー素材集「いらすとや」がここまで広まったワケ

プレゼン資料、広告、看板……。東京の街には「いらすとや」のイラストがあふれています。その背景には、どのような社会的要因があるのでしょうか。東京都市大学の岡部大介教授が社会情報学の視点から考察します。


街の隙間のクリエイティビティ

 考現学に協力してくれた学生たちによれば、主な生息エリアとしては

1.地域の掲示板
2.マンションの共用スペース
3.スーパーマーケットの掲示板
4.郵便局
5.大学
6.電車のドア

といった「小さな広告」があげられるようです。

「いらすとや」流の東京都のキャラクター(画像:いらすとや)

 あらためて、「いらすとや」が特定の場所に限定することなく、至るところに「生息」している様子が見えてきました。大学でよく目にしていたプレゼン資料だけでなく、地域に根ざした場所、スーパーマーケット、共用スペースなど、「固有性なく」存在しています。

「いらすとや」の特徴は、無料で、種類が豊富で、汎用的なところにあります。とはいえ、同じテイストのイラストがここまで街中にあふれることになったのはなぜでしょう。

「無料で、種類が豊富で、汎用性がある」の対極にあるものは、ギフトのような「高価で、稀少で、貴重なもの」です。ギフトをもらうと、私たちは贈り主への「負い目感情」を抱いてしまいます。できるだけ早くお返しをして感情を解消したくなります。無料で、豊富で、汎用的な「いらすとや」には、負い目感情を覚える必要がありません。

 そして、そのような感情なくデザインに組み込むことができる「いらすとや」によって、街中に「気軽な二次創作」があふれてきたと考えられます。

個々にわき起こるデザイン欲求

 スーパーマーケットの掲示板や郵便局のチラシの考現学から見えてきたことは、「いらすとや」の既存のイラストを使って、ほんのちょっとした創作を楽しむ私たちの姿です。チラシにワンポイント、イラストを気軽に追加することで、誰しもが創作やデザインの活動に参加できるようになったといえます。

 同人誌文化の発達にもみられるように、既存のものを用いて二次創作的な表現を楽しむことを、私たちは比較的得意としているのかもしれません。

「いらすとや」のたくさんの選択肢の中から、自分の作っているチラシのイメージにあったイラストを選び出し、そして、選び出されたイラストによって、チラシの構図をまたちょっと変えたりする。そういった「日常生活のなかのちょっとした創作活動」の引き金のひとつになっているのが「いらすとや」です。

「いらすとや」に触発されて、デザイナーではないふつうの人々の、ちょっとデザインしたくなる欲求がわき起こります。もちろんプロのデザイナーには及びません。

 ただし、やや大げさにいうと、「いらすとや」はふつうの人々が生活の中で創作できるよう、デザインという活動の「民主化」を引き起こしたのかもしれません。

 街にたたずむ数々の「いらすとや」は、もしかしたら、個性溢れる東京の景色を「無害なイラスト」で均一化してしまう存在のようにも思われるかもしれません。

 しかしその一方で、私たちのちょっとした「隙間のクリエイティビティ」を刺激し続けている存在でもあるのです。


【写真】街なかで見つけた「いらすとや」のイラスト

画像ギャラリー

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