披露宴の料理、なぜ「フレンチ」が多いのか?

  • ライフ
披露宴の料理、なぜ「フレンチ」が多いのか?

\ この記事を書いた人 /

アーバンライフメトロ編集部のプロフィール画像

アーバンライフメトロ編集部

編集部

ライターページへ

披露宴の料理にはフランス料理がよく出てきます。いったいなぜでしょうか。披露宴に何度も参加した人なら一度は思った疑問に迫ります。

上昇する披露宴の「フランス料理」の比率

「ジューンブライド」という言葉があるように、6月は曇りがちな天候が多いにも関わらず、結婚式や披露宴が盛り上がりを見せます。披露宴の豪華な料理を楽しみに、参加前からワクワクしている人も多いことでしょう。

披露宴の料理といえばフランス料理というイメージが強い(画像:写真AC)



 そんな披露宴の料理には、なぜかフランス料理がよく出ます。それを裏付けるデータもあります。

 結婚情報誌「ゼクシィ」を運営するリクルートマーケティングパートナーズ(品川区上大崎)が2018年10月に発表した「ゼクシィ結婚トレンド調査 2018」によると、同年に首都圏で行われた披露宴・披露パーティの料理で出たのは「フランス料理」が54%と過半数を占め、和食と洋食を組み合わせた「折衷料理」が22%で続きました。

 同調査の過去のデータを見ると、フランス料理の割合は2006(平成18)年調査で46.4%、2012年の調査で51.6%となっていることから、年を追うごとに上昇基調にあることが分かります。

「料理を使ったおもてなしに対する『温度感』が近年上がっており、その結果のひとつといえます」

 ゼクシィ編集長の森奈織子さんは、こう指摘します。

時間の関係上「日本料理からコース料理へ」

 ここでひとつ、根本的な疑問が。日本なのに、なぜフランス料理?。

首都圏で行われた披露宴・披露パーティにフランス料理が出た割合(画像:「ゼクシィ結婚トレンド調査 2018」のデータを基にULM編集部で作成)



 ウエディングプロデュースに詳しいカーロカーラ(石川県加賀市)代表の小谷由美子さんはその歴史的背景について、次のように話します。

「戦後の第一次ベビーブームで生まれた子どもたちが結婚適齢期を迎えた昭和50~60年ごろ、結婚式の実施数が急増し、式場の数が圧倒的に足りなくなりました。そのため、首都圏のホテルから1日あたりの実施数を増やそうという動きが出て、披露宴の時間が短縮されたり、式の進行が見直しされるようになったりしたのです。その結果、料理の種類もそれまでの日本料理からコース料理に移行されるようになりました。コース料理の場合、『食事が終わりましたので、式をお開きにします』という流れを作れるため、時間のコントロールに直結するのです」

 小谷さんによると、1980(昭和55)年ごろの婚礼の日本料理は、1品ずつ提供されるような懐石スタイルではなく、前菜や炊合せなど、膳に6品前後が提供される会席料理(計12品)だったといいます。

 参加者は、自宅に持ち帰れない刺し身や汁物を優先して食べ、残りを折り箱に納めて持ち帰っていました。当時の宴は「参加者同士の交流が一段落したら、お開きにする」という考えだったため、平均3時間半ぐらいの開催だったといいます。しかしコース料理を導入したことで、その時間を1時間半程度に抑えられるようになったとのことです。

「コース料理にフランス料理が選ばれたのは、『バンケット(晩餐会)での提供を基に選ばれた料理』としてふさわしかったからと考えられます。ソース(スープ)など、温かいものはゲストテーブルで提供できるスタイルも合っていたのでは。フランス料理は国の晩餐会でも多く使われ、『フォーマル = フランス料理』という流れもあったと考えられます」

 披露宴で出るフランス料理はメニュー内容も提供当時から大きく変化しており、近年はナイフとフォークを使う「王道コース」から、箸でも食べられる「創作フランス料理」に移行しているとのこと。スープも、コンソメスープから「旬の野菜のスープ」になったり、ハーフコースで、1皿のボリュームが多くなっていたりする傾向があるといいます。

 創作フランス料理が喜ばれるようになったのは、日本人の食生活が欧米化したことで、王道のフランス料理より「洋食」がゲストに喜ばれるようになったからだといいます。また、シェフのスキル向上も大きな要因とのことです。

披露宴の料理も「パーソナライズ化」へ

 最後に、首都圏のウエディング企業に最新動向を聞いてみました。

 業界大手で、都内に11会場を構えるテイクアンドギヴ・ニーズ(品川区東品川)のこだわりは、既製品をなるべく使わないことだといいます。

「肉も魚も丸ごと仕入れ、骨から出汁やソースを作る基本姿勢を採っています。週末のご披露宴に合わせ、1週間かけて仕込みを行っています」(同社担当者)

 同社では、新郎新婦とシェフとの打合せを事前に行い、料理の説明や要望を聞き、コースを作っているとのこと。会場によっては地場産の食材を使ったり、地産地消に対応できるような体制をとっていたりするそうです。また最近は、新郎新婦だけでなく、ゲストの要望にも応えているようにしているといいます。

「披露宴当日に、ゲスト一人ひとりにメインのお肉を選んでいただいたり、事前にアレルギーや好き嫌いを聞いたりして、料理の『パーソナライズ化』に対応しています」(同)

 同じく大手で、都内に11会場を構えるエスクリ(港区西新橋)は、フランス料理の見た目や技法を踏襲しつつも、和食材を織り込むことで、ゲストに慣れ親しんだ味わいを伝える努力をしているそうです。

 披露宴でフランス料理が出る割合は、今後も増えていくのでしょうか。

 エスクリは「ますます増えていく」とし、その理由について次のように話します。

「ご披露宴を行われるカップルの方々は、若いころからフランス料理店をデートで使われる機会が多く、それゆえ、『おもてなしするならフランス料理』と考える方々が増えると思われるからです」(エスクリ)

※ ※ ※

 披露宴の料理には、なぜフランス料理がよく出るのか――。それを紐解くと、時代によって移り変わる人々の価値観が見えてきました。これからの動向にさらなる注目が集まりそうです。

関連記事