日傘の効果を「生地」と「色」で徹底解説 もうすぐ夏到来、今年は男性ニーズも増加?

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日傘の効果を「生地」と「色」で徹底解説 もうすぐ夏到来、今年は男性ニーズも増加?

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日傘は生地や色によって遮熱やUVカット、遮光効果などが異なり、それぞれにメリットとデメリットがあります。その使い方を間違うと、逆効果の場合も。日傘を多用する時季に備えるべく、傘製造メーカーの東京丸惣にこれらについて話を聞きました。

白い日傘、黒い日傘のメリットとデメリット

 夏の東京都心部は、ヒートアイランド現象が顕著になっています。小池都知事が東京五輪の暑さ対策に「かぶる傘」を発表しましたが、日傘を紫外線対策のみならず、熱中症対策として、夏の外出時に欠かせないという人も多いことでしょう。

 また環境省が5月21日(火)、男性にも日傘の活用を促す取り組みを始めると発表したことで、新たな市場拡大も期待されます。

 ひとくちに日傘といっても、生地や色により遮熱やUV(紫外線)カットなどの効果も様々。それぞれにメリットとデメリットがあります。これらについて、傘製造メーカーの東京丸惣(中央区日本橋、昭和24年創業)代表取締役社長の相馬和之さんに詳しく教えてもらいました。使用頻度の高い折り畳み傘で以下に紹介します。

日傘は真夏の熱中症対策にも有効(画像:東京丸惣)



 下記の一般的な日傘の生地と色で効果をみていきます。

1.天然繊維(綿・麻) 白
2.混毛 綿/ポリエステル or ナイロン 黒
3.化学繊維 ポリエステル or ナイロン 黒
4.化学繊維 PU(ポリウレタン)シルバーコーティング 裏黒(表がシルバー、傘裏が黒)
5.化学繊維 フィルムコーティング 裏黒(傘裏が黒)

●遮熱効果が最も高いのは「1」

 遮熱については天然繊維で、色は白が最も高い効果を得られます。天然繊維は放熱性が高く、白は断熱効果が高いためです。他方、黒は蓄熱効果がある(遮熱効果が最も低い)ため、生地の裏側に熱が浸透しやすく、傘下の温度が上昇します。したがって、3は熱中症予防には逆効果になることも。裏側に熱がたまらないように、あるいは表の熱が裏側に移動しないようにコーティングを施した生地(4や5)は、遮熱効果が上がります。

 遮熱効果が高いのは、1、2、5、4、3の順となります。

●一般的に白は紫外線を透過しやすく、黒は遮断しやすい

 UVカットについては、白は透過しやすく、黒は遮断しやすくなります。天然繊維は遮熱には効果的ですが、繊維の目が荒いため、紫外線を透過しやすいというデメリットがあります。化学繊維は繊維が細くキメも細かいため、紫外線を透過しにくいのがメリットです。4と5については、コーティングを化学繊維表面に塗布するため、さらに透過しにくくなります。

 したがって、UVカット効果が高いのは、5、4、3、2、1の順。2や3にUVカット加工を施しても順位は変わりません。この「UVカット加工」について、次に説明します。

「UVカット加工」の落とし穴、カット率が下がっていくものも

 引き続き、以下を比較していきます。

1.天然繊維(綿・麻) 白
2.混毛 綿/ポリエステル or ナイロン 黒
3.化学繊維 ポリエステル or ナイロン 裏黒
4.化学繊維 PU(ポリウレタン)シルバーコーティング 裏黒
5.化学繊維 フィルムコーティング 裏黒

UVカットと遮熱効果の比較表



●UVカット加工は、シーズン毎にUVカット率が下がっていくものも

 UVカット加工について誤解が多いのは、ポリエステルにはそのままでも90%程度紫外線をカットする特性が備わっていて、さらにUVカット率を高めるために溶剤加工を施すということです。しかし、溶剤加工によりアップするのは5%程度だそうで、UVカット率は95%前後となります。

 これに対して、PUおよびフィルムコーティング(裏黒)は化学繊維表面に塗布して繊維の隙間を埋めるため、99~99.9%紫外線をカットすることがわかっています(4と5が該当)。また、ポリエステルなどに施された溶剤加工はシーズン毎にUVカット率が落ちていきますが、コーティングした生地はほぼ変わらないメリットがあります。UVカット効果が高い色については、黒、紺、茶色、緑、パステルカラー、ベージュ、白の順です。遮熱効果はこの逆です。

●UVカットには傘が大きい方がベター

 紫外線は横からも下からも浴びます。跳ね返りによって下から浴びる紫外線は、頭上からの量と比べると大幅に低下しますが、横からはほぼ変わらない量を浴びるそうです。そのため、横からの紫外線を防ぐには、傘の形状は大きく、深い方がベターとなります。

●晴雨兼用の傘生地は化学繊維 フィルムコーティング(裏黒)がベスト

 折り畳傘の場合、日傘は「涼しさ+UVカット+軽量さ」が重視され、晴雨兼用の傘はこれらに加えて「防水力」が必要です。雨傘には撥水効果の高いポリエステルが最も適しており、表面をコーティングしたものは水分の吸収力が高いため、べったりと雨水を含んでしまいます。

 したがって、雨傘としての使い勝手は3、5、4、2の順(1は除外)ですが、涼しさ+UVカット+軽量さも加えた総合的な優劣は5、3と4(同位)、2の順となります。

熱中症対策に有効な、日傘とミニ扇風機の併用

●熱中症予防に、ミニ扇風機との併用が効果的

 前述の通り、傘下の温度は表面の温度より高くなるため、遮熱には本来、頭部を傘の裏側から離して使うのが良いとされています。他方、UVカット率を高くする使い方はその逆となり、傘下面に頭部を近づけるのが効果的です。しかしこの場合は注意が必要で、遮熱効果の少ない生地は傘下の温度が上がるため、頭部を近づけて使い続けると熱中症の危険が高まってしまいます。

 昨今、この対策としてミニ扇風機との併用が注目されています。傘骨部分に取り付けられるものや、首から掛けられるものもあり、どちらも手を塞がれずに使用できる画期的なものです。

●化学繊維 フィルムコーティングが理想的な日傘?

 多くの女性が日傘に遮熱効果とUVカット効果の両方を求めることでしょう。

日傘使用イメージ(画像:東京丸惣)



 特にUVカット化粧品を使用している場合、汗腺をふさいでいるため遮熱効果の高い傘を選ばないと、体温調節の機能が低下して熱中症の危険性が高まることが指摘されています。しかし、ここに挙げた5つの生地について、遮熱効果とUVカット効果の両方がMAXに高いものはまだありません。

 よって、UVカット率が最も高く、遮熱効果が3番めに高い4(化学繊維 フィルムコーティング 裏黒)が総合的にはベストといえます。ミニ扇風機と併用すると傘下の温度が下がるので、4はさらに理想的となるでしょう。

 日傘によってはコーティングを傘の裏側に施しているものもあり、その場合、UVカット効果は変わりませんが、遮熱効果は下がります。また、色によっても効果は変わり、何に重きを置くかで傘選びも変わってきます。

 東京丸惣では、UVカットに効果的な天然鉱物と、酸化チタンを配合するという特殊コーティングを施した商品で、傘の表面が白色の「プレミアムホワイト」を製造しています。実験でUVカット率が99%という結果が得られ、紫外線を透過しやすい白い日傘としては史上初めてのことだそうです。

 白は遮熱性も高く、女性にとって重要なふたつの効果を高いレベルで兼ね備えた傘といえます。ただし、定価は1万円(税抜)と傘としては高額な価格帯。製造しているのも東京丸惣のみです。

 最後に日傘の手入れ方法ですが、目に見えない微小粒子状物質(PM2.5)や黄砂が付着したりするため、使用後に軽く拭くことがUVカットなどの効果を保つのに大事と相馬社長はいいます。また晴雨兼用の傘は、雨の日に使用した場合、日陰で乾かすのも長持ちさせるコツだそうです。

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