出産は「キャリア崩壊」の序章か? 会社を辞めた私が考える

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出産は「キャリア崩壊」の序章か? 会社を辞めた私が考える

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宮野茉莉子

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子どもを持つか、キャリアを築くか、その二者択一で迷い悩む女性は少なくありません。「育児とキャリアの両立」の難しさと、その可能性について、元金融機関勤務で3児の母でもあるライターの宮野茉莉子さんが提言します。

「場所」と「時間」がネックで退職

 今の30~40代の女性の中には、「大学に入り、大企業に就職を」と育てられたものの、出産を機にキャリアを諦め「思い描いていた未来と違った」と思う方も少なくないでしょう。30代半ばである筆者も、そのひとり。産後は、退職の選択肢しかありませんでした。

出産を機にキャリアを諦める女性は少なくない(画像:写真AC)



 新卒で金融機関に入社した筆者。地域限定型という職種で、基本的にその地域に密着し、転勤のない職種でした。20代半ばで結婚し、夫は転勤族。夫の転勤に合わせて筆者が他の支店に移動することは制度上できず、退職しました。

 夫が転勤族の場合、単身赴任を選択しない限り、妻が退職するケースが多いでしょう。何より「他に選択肢がない」ので、退職するしかありません。ちなみに現在では、地域限定型でも支店移動できる制度ができたようです。

 その後、約3年ごとに転勤。3年ごとの引っ越しでは、正社員として就職することはできません。転勤地で同じ転勤族のママと話すこともありましたが、多くが専業主婦かパートで働く方々でした。

 ひとり目の産後、半年経って育児も少し落ち着き、キャリアを考え始めました。既に退職し、かつ転勤族のため、保育園の選択肢はなし。幼稚園入園まで3年あるため、その間に育児をしながら昔からやりたかった仕事に挑戦しようと思いました。

 逆に「やりたい仕事に挑戦できるのは幼稚園入園まで。うまくいかなければ諦める」と決意。子どもの昼寝中や夜間を使い、今でもフリーランスでライターを続けています。

 現在子どもは3人、うちひとりは未就園児。ひとりが風邪を引けば家庭内感染で看病に2~3週間かかることもあり、会社で働くには「時間」がネックに。在宅で仕事ができれば助かるので、ある意味「場所もネック」といえるかもしれません。今はフリーランスで働くのがちょうどいいと感じています。

両立は可能といえば可能だが……

 筆者のように「場所」や「時間」を理由に、産後キャリアを断念する人は少なくありません。育児で仕事のブランクがあけば、自信も減るもの。育児が落ち着いて再度就活するも、やりたい仕事は諦めてしまう人も。また女性の場合、キャリアというより「仕事と育児が両立できる仕事選び」になりがちです。

 一方で、キャリアと育児の両立も可能です。ただ「誰もが普通にできるレベル」ではなく、「疲れ果ててやっとの両立」状態。祖父母に頼れない環境では厳しいですし、ファミリーサポートや病児育児の活用も重要となります。

 現状では、「仕事も育児も楽しむ」というより、「仕事か、育児か」、もしくは「疲れ果てて両立」。しかし本音を言えば、「好きな仕事のキャリアも築きたいし、かわいいわが子の育児もしたい」と望む女性も多いのです。

 こういった希望を口にすることは、決して悪いことではないはず。それでも日本では女性が「仕事も育児も」と求めると、「母親なのに」「ワガママ」と捉えられる価値観が残っています。この価値観もまた、女性のキャリアのネックでしょう。

何をもって「キャリア」とするか

 女性もキャリアを築ける社会になってほしいと望むものの、しばらくは現状が続くでしょう。この状況で考えたいのは、「何をもってキャリアとするか」。キャリアを「正社員限定」にすると、難しいところもあります。

 もう少し長い目でキャリアを考えることもできます。育児中に「知識を積む」「資格をとる」「習い事やスクールに通う」、またパートやフリーランスで「経験を積む」という選択肢もあります。筆者の周囲には、育児中に資格を取得したり、起業したり、習い事の先生になったりする方もいます。

 それと同時にしたいのが、「女性がキャリアを築く権利を夫婦間で共有すること」。パートで働く女性に、「楽でいいよね」「パートなら家事育児も女性がやるべき」という男性は少なくありません。

 今後は男女問わず、70歳まで仕事をする可能性も高い時代。長い人生で考えれば育児だけでなく、介護やリストラ、病気の可能性がないとは誰しも言えません。「長い目で見て女性がキャリアを築ける」よう、夫婦で価値観の共有をすることもまた大切でしょう。

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