詩人・金子みすゞに学ぶ、現代の主婦像 「みんなちがって、みんないい」
2019年5月9日
ライフ女性の社会進出が進む社会において「主婦」とはどのような存在なのでしょうか。しゅふJOB総研所長で、ヒトラボ編集長の川上敬太郎さんが解説します。
主婦像の「正解」が多様化している
もはや、主婦は家事に専念し、完璧にこなすという価値観だけで測ることはできません。主婦としての「あるべき振る舞い」を共通パターンに当てはめづらくなっているのです。
それは一見、気楽で自由な状態のようにも見えますが、周囲の理解が伴わないと、とても生きづらい環境だと言えます。

共働きが当たり前にもかかわらず、過去の価値観のまま、完璧な家事と育児も求められる。一方、結婚・出産後も総合職として培ったキャリアを継続・発展させていきたいと思っても、条件に合う仕事はなかなか見つからない。あるいは、家庭の事情で働きたくても働けず、女性活躍推進が叫ばれる世の中になぜか後ろめたさすら感じてしまう。
主婦という「くくり」はあっても、価値観の多様化が進めば進むほど、正解の形も多様化し、あるべき「主婦像」について共通認識を持つことは困難になります。
それは見方を変えると、価値観の異なる者同士が、互いを理解できず、ともすると互いを否定し、傷つけ合う社会へと陥る危険をはらんでいます。
みんなちがって、みんないい?
大正時代末期から昭和時代初期にかけて活躍した童謡詩人・金子みすゞさん(1930年没)の代表作のひとつ、私と小鳥と鈴と」(『わたしと小鳥とすずと―金子みすゞ童謡集』
私は小鳥のように空を飛べないけれど、小鳥は私のような速さで走れない。私の体からは鈴のように綺麗な音は出ないけど、鈴は私のようにたくさんの歌を知らない。鈴も小鳥も私もそれぞれ違いがあるが、それぞれの良さがある。
この詩の最後は「みんなちがって、みんないい」で締めくくられます。素敵なフレーズです。価値観の多様化が進む現代こそ、必要なメッセージといえるのではないでしょうか。
ひと言で「主婦層」といっても、置かれている状況や夫婦関係、家事、育児、仕事への考え方はさまざまです。主婦であることに誇りを持っている人もいれば、主婦とくくられることに抵抗を覚える人もいます。それぞれ、「みんなちがって、みんないい」はずです。
多様化がさらに進み、社会に浸透し、「主婦像」が人それぞれ異なる状態が当たり前になれば、主婦というくくりは必要なくなるかもしれません。
また、価値観の多様化が進んでいるのは夫も同じです。夫は「外に出て稼ぐもの」という過去の価値観は、社会からの暗黙のプレッシャーとなり、今も彼らを拘束しています。「本当は主夫として家庭を支えたい」と考えている夫もいるはずです。
主婦も主夫も、あなたも私も、他の誰かも、それぞれが「みんなちがって、みんないい」。
それが、今を生きる私たちが心がけておくべきスタンスなのだと思います。
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