首都圏で高まる「和婚」人気 白無垢や色打掛で挙式、「小物」で個性の差をつける
これまで結婚式はチャペルなどで行うキリスト教式が人気でしたが、近年、和のテイストを取り入れた式の数が増えています。いったいなぜでしょうか。晩婚化で格式重視の傾向 和のテイストを取り入れた結婚式「和婚」が近年、増加しています。リクルートマーケティングパートナーズ(品川区上大崎)の結婚情報誌「ゼクシィ」がまとめた「結婚トレンド調査2017」によると、首都圏の神前式の実施数は、過去5年で3.6ポイント増加しています。 キリスト教式が減少する一方、神前式の割合は増加している(画像:「結婚トレンド調査2017」のデータを元にULM編集部で作成) 神前式とは、神の前で結婚を誓う日本古来の結婚式で、神社のほか、結婚式場やホテル内の神殿、料亭などで行われる和婚の代表格です。 これまで和婚といえば神前式やお寺で行う仏前式でしたが、近年では祝言(しゅうげん)にも注目が集まっています。 祝言とは和装を着て行う人前式のこと。神仏ではなく列席者の前で結婚を誓うため、宗教にとらわれない気軽さが人気です。ラッセンブリ広尾(港区南麻布)や湯本富士屋ホテル(神奈川県箱根町)などでは、和婚のニーズの高まりを受けて、祝言プランをスタートさせました。 いったいなぜ、神前式や祝言といった和婚に注目が集まっているのでしょうか。結婚準備クチコミ情報サイト「ウエディングパーク」を運営するウエディングパーク(港区南青山)のブランドマネージャー・菊地亜希さんは、理由のひとつに「女性の社会進出と晩婚化」を挙げます。実際に、「結婚トレンド調査2017」のデータでも、妻の年齢が上がるほど、神前式の割合も増加していることが明らかになっています。 「晩婚化により結婚式を挙げる女性の年齢も上がり、『今までの人生でお世話になった方へのけじめをしっかりつけたい』と、格式を重んじる新婦さんが増えているように感じます。そのほかにも、沢尻エリカさんや東原亜希さんなど和婚を行った有名人の影響だったり、和装のバリエーションが豊富になったりして、『インスタ映え』するようになったことも挙げられます」(菊地さん) ホテル椿山荘東京(文京区関口)を運営する藤田観光(同)の担当者は、そのほかの要因についてこう説明します。 「友人の大半がキリスト教式の結婚式を挙げているのを見て、逆に和婚の方が個性を出せる、かっこいいと考える女性も増えています。それに加えて、2020年の東京オリンピック開催で、日本の伝統文化に対する再評価もその背景にあります。ウェディングギフトにおいても、和の陶磁器や地方の名品などが見直されています」(藤田観光) また、SNSなどを中心に若い女性たちから人気の花嫁着物コーディネートサロン「CUCURU」(港区南青山)代表の安東夏子さんは「晩婚や再婚が増えたことで、結婚式に『キラキラ感』を求める人が減っているため」と指摘します。 ホテル椿山荘東京に新たにオープンした神殿(画像:藤田観光) こういったニーズを受けて、藤田観光では、ホテル椿山荘東京の敷地内に2017年11月、都内のホテルとして最大級となる和婚用神殿(102人収容)をオープンしました。和婚用でありながら、キリスト教式に関心を持っている層にもPRできるよう、窓を広めにして、チャペル的要素も取り入れたデザインにしたといいます。 「友人を始めとする大勢の方たちに見守られて挙式をしたいというニーズが、特に新婦側に増えています。以前は披露宴がそのような役割を担っていましたが、現在では挙式にそのニーズが移りつつあります」(藤田観光) 白無垢は最も格式高い正礼装 そんな和婚ですが、その婚礼衣装には一般的に、白無垢・色打掛(いろうちかけ)・引き振袖の3種類があります。 左から白無垢、色打掛(画像:写真AC) 白無垢とは上下、小物すべてが白であるのが特徴で、和婚の衣装では最も格式が高いとされています。色打掛は色や柄が鮮やかですが、かつては白無垢よりも格下とされていました。 「現在でも和婚の挙式はほとんどが白無垢で、色打掛はお色直しとして使われることが多いです」(菊地さん) 「白無垢は、特に家族・親族のみの挙式を挙げる人たちに好まれる傾向があります」(安東さん) 求められているのは「かわいさ」+「ストーリー」 このように伝統的な和婚が注目を浴びるなか、新婦となる女性たちはどのように「今っぽさ」を表現しているのでしょうか。CUCURUの安東さんはこう話します。 「着物自体はあくまでも『正統派を美しく着る』のが基本で、これは現在も変わっていません。『今っぽさ』を出すのは小物。草履や帯揚げ、半衿(はんえり)などや、箱迫や懐剣といった『花嫁5点セット』で個性を出す人が増えています。 『正統派を美しく着る』というのは、着崩したり、だらしなく見えたりしないように、花嫁着物の本来あるべき「格」を大切にしながら、職人さんの技法で作ったお着物を引き立てることです。 昔は花嫁着物の掛下や小物は白と金、赤ぐらいしか選択肢がありませんでした。そのため現在では、会場や季節感、なりたいイメージをもとに、さまざまなお色味や質感を持つ小物を組み合わせて、全体のコーディネートを作ることがその花嫁さまの個性となります」(安東さん) また、安東さんは現在の女性は「単にかわいい着物や小物だけを求めているのではない」と指摘します。 「その物がどういったところで作られたのか、どういった職人が作ったのかなど、背後にあるストーリーにこだわる人たちが増えています。既存の『かわいさ』に加えて、メーカー側がそういったものを製品に付与していければ、和婚はさらなる盛り上がりを見せるでしょう」(安東さん) いくつもの色と柄をつなぎ合わせる「道長取」(みちながどり)という技法で作られた現代版和婚用の衣装。重厚感があり、気高い印象を与えている(画像:CUCURU) 時代の変化が生み出すさまざまな要因で盛り上がりを見せる和婚。その流れからますます目が離せません。
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