下北沢に続々オープン 音楽不況も「レコード店」が元気なワケ

演劇や音楽を始めとするサブカルの聖地「下北沢」。そんな下北沢の駅周辺には多くのレコード店が軒を並べています。いったいなぜでしょうか。ブログ「WASTE OF POPS 80s-90s」管理人のO.D.A.さんが解説します。


次々に閉店する街のCDショップ

 音楽を聴く主な手段がCDから配信・ストリーミングへと移行していることもあり、日本全国で街のCDショップが次々に閉店しています。

 一方、アナログレコードの再評価の動きもあり、レコードを扱うショップは、大手のタワーレコードやHMVがアナログ専門のショップを展開するなど、新たな「レコード店」がオープンする動きもあります。

 そんな今、東京の中で最もレコード店の動きが激しい街は下北沢です。

個性的な輸入・中古レコード店が集まる下北沢

 2000年代の一時期には20を越えるレコード店があった下北沢ですが、2000年代後半以降、「ハイライン・レコード」「イエローポップ下北沢店」「ワルシャワ」、そしてもともとは下北沢が本店だった「レコファン」等の有名店を含む多くの店舗が閉店しました。

 2020年に入ってからも、オーナー飯島直樹氏の逝去に伴って、地域の名物店だった「DISC SHOP ZERO」が閉店しました。

 しかし、日本屈指の「レコード店密集地域」であった渋谷の宇田川町かいわい、西新宿の小滝橋通り周辺がかつてのにぎわいを失いつつある一方、下北沢は他の地域のようにただ減っていくのではなく、店舗数こそ最盛期には及ばないものの、今も新たなレコード店が続々とオープンしているのです。

 かつては南口商店街のオサダ楽器店、現在の小田急東口改札のそばに位置していたフジレコード店等、アイドルから演歌までの新譜を扱う「街のレコード店」がありました。今の下北沢にはそのようなタイプの店は既にありません。

 かわりに、こだわった品ぞろえで勝負する、個性的な輸入・中古レコード店が集まっています。

ニューオープンも絶えない

 下北沢に通う人間にはおなじみ、地域内では圧倒的な品ぞろえを誇る「ディスクユニオン 下北沢店」(世田谷区北沢1)、1982(昭和57)年オープンの下北沢現役最古参「フラッシュ・ディスク・ランチ」(北沢2)、独自の品ぞろえにファンが多い京都発のセレクトショップ「JET SET 下北沢店」(同)などの「定番店」と呼べるレコード店が筆頭に挙げられますが、新たにオープンする店も絶えません。

「ディスクユニオン 下北沢店」の外観(画像:(C)Google)



 2019年にはこれまで大手チェーンの常設店のなかった下北沢に、HMVが小田急下北沢駅の2階の飲食店「ヤキトリてっちゃん talking GORILLA」の店舗内のポップアップショップという形で、非常に小さい店舗を開きました。

 2020年に入ってからも、ミュージシャン曽我部恵一氏がオーナーを務める「PINK MOON RECORDS」(北沢2)、小田急地下化後の線路跡地の商業施設「BONUS TRACK」には、小ぢんまりとしつつも特色ある品そろえの「pianola records」(同区代田2)というレコード店が新たにオープンしています。

 そしてさらに、他の地域でもともと営業していたレコード店が下北沢に移転するという事例もここ数年で発生しています。

 横浜駅にほど近い位置で営業していた「RECORD STATION」(北沢3)は2017年に下北沢一番街へ、また西新宿・小滝橋の老舗中の老舗だった新宿レコードはその「新宿レコード」(北沢2)という店名のまま、2018年に下北沢駅そばの本多劇場の建物内に移転して営業を継続しています。

 また、渋谷区幡ヶ谷で営業している「ELLA RECORDS」は、2018年に下北沢に支店「ELLA RECORDS 下北沢店」(同)をオープンさせています。

なぜ下北沢にレコード店が集まるのか

 では、なぜ下北沢にはこんなにレコード店が多いのでしょうか。

 下北沢はレコード店以上にライブハウスが多い街として有名で、現在はライブハウスの数の方がレコード店の数を越えています。

 それは、新宿・渋谷という音楽にとっての二大地域の両方からほど近く、かつ都心より安く住むことができる住宅地でもあったために、バンドマンや音楽関係者がこの街に集積したのが始まりと言われています。

「音楽の街」というアイデンティティーは、渋谷のライブハウス屋根裏が移転してきた1986(昭和61)年以降に盛り上がり、1990年代になると、

・下北沢SHELTER(世田谷区北沢2)
・CLUB 251(北沢5)
・下北沢GARAGE(北沢3)
・下北沢CLUB Que(北沢2)

といった今も続く数々のライブハウスが次々にオープンし、それらのライブハウスを拠点に活動していたバンドがメジャーな存在になっていったことで決定的なものとなります。

 音楽好きが集まり、ミュージシャンの演奏を聴きに来る人々が集まるのであれば、その周辺にレコード店が増えるのも必然と言えるでしょう。

「下北沢GARAGE」の外観(画像:(C)Google)



 また、市街域がコンパクトにまとまっているため、街全体を比較的楽に回ることが可能であることも、レコード店巡りには非常に便利です。いわば下北沢の街全体が、ライブハウスとレコード店の「密集地域」として機能していると言っていいでしょう。

 全国的なCDの売り上げは落ちていても、地域でのライブ活動がむしろこれまで以上に活況になったことで、音楽好きがより多く集まる街となり、それに伴ってレコード店もまた下北沢に集まったのです。

再開発でレコード店巡りも便利に

 現在の下北沢は、小田急の地下化に伴う再開発で一部失われた魅力もありますが、代わりにかつて線路で分断されていた駅の北側と南側の往来は大変に便利になりました。レコード店もさらに巡りやすくなっています。

 今春以降、なかなかライブを開催できるような状況ではありませんでしたが、下北沢のライブハウスも新しいルールの中で、少しずつではありますがライブが再開されるようになっています。

再開発された下北沢駅東口の様子(画像:写真AC)



 次に下北沢のライブハウスに足を向ける際には、ライブに参加するだけでなく個性的なレコード店の数々を巡ってみるのも楽しいかもしれません。


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